23 / 43

第23話

王子様みたいだとは思ったけど……本当にレッカー王子だったなんて……。 夕飯を作る都居くんの姿を一つも見逃さない様に目をこらして見つめる。 「……山川…ごめん。ちょっと作り辛い」 恥ずかしそうな、はにかんだ笑顔。 「……ごめん」 邪魔してしまった。 リビングに行ってようと体を返すと後ろから抱き締められる。 「そんな捨てられたタヌキみたいな顔しないでよ……こっちが辛いよ」 「ごめん……捨てられたタヌキを見たことないや」 どんな顔をしてたんだろう? 大人しくリビングに戻りソファーから料理する都居くんを盗み見る。 とても楽しそうに作っている顔。 あのレッカー王子が絵本を抜け出して俺の為に料理を……まるでおとぎ話の様な、夢の様な出来事。 しかも恋人。 クッションを抱き締めて身悶えた。 ゴンッ!! 「山川!?大丈夫!?」 「ソファーから落ちただけ……大丈夫」 ……ではない。 強かに頭を打った。 「都居くん見てたら落ち着かないから……先にお風呂行ってくる」 お風呂に入っても今日の興奮が忘れられない。 晩御飯を食べても、テレビを見ててもそわそわ、うきうき心が興奮している。 「明日があるからそろそろ寝ようか?」 「うん、お休み」 俺の部屋に戻ろうとして首を捕まえられた。 「何でそっちの部屋!?こんなに俺の事見てきてて、何でそこはあっさりなの?一緒に寝ようよ?山川抱いて眠ると凄い幸せな気持ちで寝れるのに!」 「俺は都居くんと寝ると落ち着かない」 全く安眠できる気がしない。 「絶対、今日は手を出さないから!ね?何でも山川のお願い聞くから!!」 土下座の安売りは止めた方が良いと思うよ? 「何でも?」 「何でも。服でも靴でも何でも買ってあげるから!一緒に寝よう?」 そんな対価が必要なほど俺の添い寝に価値は無いと思うけど……。 ・・・・・・・・・・・・・ 何でも願いを聞いてくれると言うので、一冊だけ買った料理の王子様の本を都居くんに朗読してもらった。 王子様が喋ってるみたいでうっとりと聞き惚れる。 「山川は本当にレッカー王子が好きだったんだね……ここまでとは思わなかった」 「姉の影響で……初恋に近かったかも………」 「じゃあ、山川の初恋は俺?」 口が滑った…何で余計な事まで言うんだ、俺。 「……近かったってだけで恋じゃ……」 否定しようとした俺を都居くんがじっと見つめてくる。 この目には……弱いんだ。 「……恋でした」 俺の答えに満足そうに都居くんの胸に収められる。 「王子様のグッズいっぱい集めてたって言ってたよね……熱烈な愛だね」 部屋を埋め尽くすタヌキコレクションを見回す。どの口がそれを言うのか……。 「都居くんこそ……何で俺にって言うか、タヌキにそこまで……」 「聞きたい?俺の恋バナ。長い道のりだったよ」 聞きたい様な……聞きたくない様な……。 「あれはねぇ……」 俺の返事を待たずに都居くんは語り始めた。
いいね
笑った
萌えた
切ない
エロい
尊い

ともだちとシェアしよう!