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気づかされること_02

 気がつけば空が夕焼け色に染まっていて、とっくに授業は終わり、今は部活の時間だ。  スマホを見ると最後の連絡は三時半。その文面は俺を心配するものばかりだ。  流石にこのまま無視をし続ける訳にはいかない。心配をかけてしまったことを謝り、寝ていて今気が付いたと送っておく。  俺からの連絡がないかとずっと待っていたんだろう。すぐに返事がきた。  教室で待っていろと書いてあったので、会った時に謝ろう。  それから間もなく総一さんが教室に姿を現す。  走ってきたのだろうか、息も切れ切れで、 「秀次、やっと会えた」  と腕の中へ閉じ込めた。随分と、心配をかけちまったようだ。 「わりぃ」  背中に腕を回して擦ると、徐々に息も落ち着きを取り戻す。 「何か嫌な事でもあったか?」 「どうして」  もしかして顔にでていたのだろうか。  だめだな、総一さんに甘える癖がついちまったようだ。 「べつに、本当の事を言われただけだからさ」 「本当の事って?」  身体が離れ肩を掴まれる。顔は先ほどよりも近く、見透かされそうで居心地が悪く、俺は視線を外して総一さんの胸を軽く押した。 「大したことじゃねぇから。それよりも、部活は良いのか」  この話はしたくない。だから話題を変えるが引き下がるようすはなく、 「話を聞いたら戻る」  どうしても口をわらせたいようだ。 「本当、たいしたことねぇし」 「そんな訳があるか」 「もういい。帰る」  本当、しつこい。心配してくれているのは解っているけどさ、言いたくないんだよ。  イライラとした俺はカバンを肩にかけ、帰ろうとするが、腕を掴まれてしまう。 「いいから、俺の事なんて放っておいてくれよ」 「放っておけるか。そんな顔をしているのに」  そんな顔ってどんな顔だよ。自分じゃわかんねぇよッ。 「強がるな。辛いときは辛いと言え。悲しいときは俺の胸をかすから頼れよ」  と頬を優しく撫でた。  イラついていた気持ちが落ち着いていく。 「総一さん……」  本当に俺に勿体ないくらい、優しくて暖かい人だ。  俺だけのものだと思うと優越感を感じ、はっとなる。  俺は今、何を考えた。 「ごめん、やっぱり大丈夫だから」  総一さんの身を引き離す。 「秀次っ」 「あのさ、俺、男の人と付き合うのは無理だから」  こんないい人を俺みたいなやつが独占していいわけない。だから離れないといけない。 「恋人として無理でも、友達でいてくれ」 「ごめん」 「秀次」  必死に俺の名を呼ぶ。だが、俺は振り返らず走り去った。

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