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Episode1・冥王ゼロス誕生45

「これが冥王様の力……。なんて凄まじいっ……」  マアヤは驚愕を隠せず、呆然とゼロスを見つめていました。  冥王の力を初めて目の当たりにしたのです。それは当然の反応でしょう。 「イスラの時を思い出します。イスラも赤ちゃんの時は大きな力を発動させると、こうして眠ってしまっていました」  眠るゼロスに笑いかけ、その小さな体を優しく抱く。  腕の中で安心して眠ってくれるゼロスに口元が綻ぶ。  苦難の果てにこの世界で誕生したゼロスが、こうして眠ってくれることが嬉しいのです。 「ブレイラー!! ブレイラ、ここか!?」 「イスラ?」  ふと遠くから私を呼ぶ声がしました。  聞き間違える筈がありません。イスラの声です。  見ると離れた場所にたくさんの松明の明かりが見えます。 「イスラ! ここです、私はここにいます!!」  そう声を上げると、松明の明かりと人々の気配が近づいてきました。  ガサガサと茂みを掻き分け、小さな影が飛び出してくる。 「ブレイラ、みつけた!」 「イスラ!」  勢いよく駆けてきて、ぎゅうっと私に抱きついてくるイスラ。  まるで弾丸のような勢いに転びそうになりましたが、なんとか踏ん張ります。 「イスラ、私を探してくれていたのですか?」 「うん! ブレイラがきてるの、わかったから!」  イスラはそう言うと、眠っているゼロスを覗き込みました。 「さっきの、ゼロスか?」 「分かるのですか?」 「オレとおなじだから」 「そうですか」  同じ力を感じたのですね。  三界の、いいえ、四界の王の力を。 「ブレイラ様、ご無事でなによりです。ブレイラ様が山に入っていたことには驚きましたが」  イスラと一緒に行動していたコレットが私の無事を確かめます。  そんなコレットに、マアヤが深々と頭を下げました。 「申し訳ありません。ブレイラ様を危険に晒したのは私の不徳の致すところです」 「その件について処罰はまた後日話しましょう。どんな理由があったとしても、ブレイラ様を危険に晒したことは問題です」 「はい。謹んでお受けします」 「ま、待ってくださいっ。マアヤは何も悪くありません、私が無理を言ったのです!」  慌てて二人の会話を遮りました。  私が山に入ることをマアヤは制止し、それを振り切ったのは私です。ならば責任は私にあるのです。それなのにマアヤに処罰が下されるなんて納得できません。 「それは想像がつきます。ですが、これとそれとは別問題ですので」 「そんな……」  言葉に詰まりました。  青褪めていく私に、コレットは長い溜息をつきます。  でも次には諦めにも似た表情になり、少しだけ厳しさを和らげてくれる。 「……もし処罰の軽減をお望みでしたら、嘆願書をお出しください。王妃様の嘆願書でしたら裁定委員の書記官達も無視できません」 「出します! 直ぐに出します!!」  即座に答えました。  これでマアヤの処罰が軽減されるなら易いものです。  良かった。マアヤを見ると、彼女は瞳に涙を滲ませていた。 「ありがとうございます。ブレイラ様」 「ありがとうなんて言わないでください。あなたに感謝し、謝らなければならないのは私です」 「ブレイラ様っ」  涙ぐむマアヤにハンカチを差し出す。  勿体ないですと受け取らない彼女の手にそれを握らせました。  処罰が軽減できそうでほっと安堵しましたが、コレットがしっかり釘を刺してくれる。 「今回は無事でしたが、ご自覚くださいませ」 「……分かっています。ご迷惑をおかけしました」  耳に痛いです。  でも何も言い返せない。コレットの言う通りなのです。  とりあえず気を取り直し、イスラやコレットとともに現われた人々を見る。松明を持った彼らは貧民街の人々のようでした。  貧民街の人々を囲むようにしてイスラに同行した護衛兵たちがいます。イスラは見事に山から帰ってこなかった人々を見つけ出してくれたのです。 「よく頑張りましたね、イスラ」 「うん、オレがんばったぞ。みんなをみつけて、どうくつのかいぶつも、ひとつ、ふたつ、みっつ、よっつ、えっと……」 「十二体です。イスラ様は十二体のトロールをお一人で討伐されました。その間に私どもは人々を保護した次第です」 「そうでしたか。あのトロールを十二体も……」 「オレ、つよい?」  イスラが瞳を輝かせて聞いてきます。  私は胸の真ん中にある本音を心の奥底にそっと隠す。 「強いですね。あなたは、とても強い」  人間を守ってくれたのですね。  あなたは人間の王を冠するに相応しい。  いい子いい子と頭を撫でると、あどけない顔でイスラがはにかみました。  そして私が保護していた女の子も、松明を持った貧民街の人々のなかに母親を見つける。
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