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神子様、力を犯し下さい

乗り心地は決して良くない、馬車の荷台に揺られながら外をぼんやりと見つめる……。 明け方まで男のモノを受け入れていた体で馬車は無茶だっただろうか? 悪路に馬車が揺れ、その度にお尻が痛い……円座クッションでもあれば別なんだけど……。 乗せて貰っておいて文句も言え無いけど。 朝までいた街も、もう見えなくなった。 奴は今頃、神子として仕上げられている頃だろう。 がんばれよ、高良(たから) 祐也(ゆうや)。 神子として世界を平和に導いてくれ。 俺は遠くから応援しているよ。 遠くなる街へ向けて、同郷の友? にエールを送った。 事の始まりは、何気ない日常の中で突然に始まった。 いつもの学校、いつもの教室、いつもの放課後。 違う事と言えば、俺の腕を掴む高良の真面目な顔。 俺とは違うグループで出来れば関わり合いになりたくない人種。 一年の時、同じクラスで『高瀬』と『高良』だから入学当初は席が近かった。 それだけの接点。 俺が『毎日何か面白い事ないかなぁ?』とぼやいている人種なら、奴は『毎日楽しくて仕方ない』と言った風に、男女関係なく多くの人に囲まれてキラキラしている人種だ。 同じ人間だが、種族が違う。 そんな奴が何故か俺の腕を掴んで王子風な顔を赤く染めている。 「……高瀬(たかせ)奏空(そなた)……好きだ」 俺の記憶が確かなら、こいつはいつも女の子をとっかえひっかえして『祐也君に告白したら、やらせてくれるなら付き合っても良いって言われた』とクラスの女子が友達と騒いでたのを聞いた。 見てくれは良いが、女好きのろくでなしと理解していたが? 違うのか? 実は男好きだったのか?女漁りはフェイク? 誰に向けてのフェイクだ? いやいや、ここは単純に考えて、嫌がらせだな。 罰ゲームとか。 「俺はなんて返事したら良いと思う?」 高良がどんな答えを待っているのか考えてもわからない。 「いや……それは俺に聞かれても……出来れば…俺の事好きになって欲しい……」 高良がそう言った時、足元に光の輪が現れた。 高良が移動すると輪も移動する。 「な、何だよ!? これっ!?」 どう見ても光の中心は高良。 片足だけ光の中に入っていた俺は、急いで光の外に出ようと身を引こうとして高良に抱きしめられた。 力強い腕から俺は抜け出せず真っ白な光に包まれた。 ………おお……。 毎日、毎日、何か面白い事はないかとぼやいていたけど……。 まさか、こう来るとは……。 まばゆい光が消えた後、俺たちは石造りの建物の中、フードを被った妖しい連中に囲まれていた。 これは異世界転移とか言うヤツではないだろうか。 「な……何だよ!? お前達!!」 俺を隠す様に抱きしめられた腕に力が籠った。 「……神子様、どうぞこの世界をお救い下さい」 一斉に頭を下げられた。 俺に……では無く高良に向けて。 別室に案内され、高良は豪華なソファーに座らされて、きっと一番偉いのであろう初老の男が対面に座っている。 俺はと言うと立たされている。 首には首輪をつけられて鎖を後ろに立っている男が握っている。 おまけだとは自己認識はしているが扱いの差が酷い。 「高瀬を離せ……」 「神子様この世界を平和に導く為にお力をお貸し下さい」 偉そうな男は高良の話を聞く気はなさそうだ。 「高瀬を離せ……!!」 俺の後ろに立っていた男が吹き飛んだ。 ……しかし男は、俺の首輪の鎖を持っていた訳で……。 当然、俺も吹き飛ぶ。 首が絞まって死ぬかと思った。 文句を言おうと顔を上げると、部屋の中は暴風が吹き荒れて、家具やら何やらが飛んで壁に衝突して壊れる。 「神子様!!お鎮まり下さい!!お前達、その子供を神子様の側へ !!」 鎖が外されて高良の横に座らされた。 高良が俺の腰を抱いて体を密着させてきた。 ……もしかして守られてる? 俺に降り掛かる災難は全てお前の所為だが……。 「神子様、改めまして……召喚にお応え頂きありがとうございます。お呼び致しましたのはこの世界を平和に導く為に我々に力をお与え頂きたいのです」 「力を与える……?」 「我々は神子様の体内に自身を埋め込む事で神子様よりお力を承る事が出来るのです」 「は…? 俺の体内に……? 自身?」 「はい。わかりやすく申しますと、神子様と肛門性交をする事により神子様のお力をこの身に宿す事が出来ると信じられております」 随分はっきりと言い直した。 つまり……高良はこいつらにケツを掘られるという訳か……。 高良の顔を見るとすごい複雑な顔をしていた。 「様々な世界より神子様を召喚しておるのですが……なかなか力を持った神子様は現れませんでした……しかし、先程のお力を拝見し確信致しました。やっと神がお応えになってくれたのだと!!」 「儀式の始まりは王からと決まっておりますが、ただいま王は外出中で……明日お戻りになられますので、明日の午後には儀式が始められるでしょう」 「勝手に連れて来て体を差し出せ!? ふざけんなっ!!」 瞳に怒りの色が宿り、ザワザワと高良の髪が揺らぎ始め、建物がガタガタと軋み始める。 「神子様……」 フードの男が高良に何か耳打ちをした途端にピタリと止まる。 「……っ!? お前ら……!!」 高良は慌てて俺を見てから、フードの男達を睨みつけた。 偉そうな初老の男はニヤリと笑った。 「儀式の間へ向かう途中、今までお越し頂いた神子様達のご様子でもご覧頂きましょうか」 フードの男達に囲まれて渡り廊下を渡り、デカい塔に向かう。 塔に一歩踏み込んだ途端、嫌な匂いが鼻をついた。 階段を上ると左右に部屋があり。 「あっ…あぁんっ!! あっ!! ひあぁぁん……」 それぞれの部屋から、生々しい音と共に嫌な声が聞こえて来る。 扉……というより鉄格子。 中が丸見えで…… 「ひぐっ!! もぉ無理ぃぃ……許して…許してぇ……」 猫耳の付いた少年を二人の男が前と後ろから同時に犯していた。 うん……見るんじゃなかった。 高良の様子を伺うと青ざめている。 当事者だもんな……言葉通り明日は我が身だもんな。 嫌なら、さっきみたいな力で逃げれば……あぁ俺のせいか。 先程のやり取りを見るに俺を盾に取られたのだろう。 悪かったな……高良。 俺など無視して逃げればいいものを……。 次の階も、その次の階も同じ様子だった。 人気? の神子様は何人もの相手をさせられているし、布団にくるまって寝ている神子も、虚ろな目でブツブツ独り言を呟いている神子まで様々だ……。 筋肉ムキムキのマッチョまでいる……あの人も突っ込まれてるのか? 手当たり次第だな……。 気分が悪くなり高良の服の裾を握りしめた。 最上階に付くと一室に押し込められる。 牢屋みたいだった下の階とは違い豪華な部屋。 「明日、王がお戻りになり次第こちらの部屋で儀式を始めますので……それまではこの部屋でお寛ぎ下さい。神子様」 初老の男はニヤリと笑うと部屋を出て行った。 お前は来いとフードの男達に鎖をつけられ引っぱられる。 高良は止めようとして、何かを思い出した様にその手を引っ込めた。 一階下の牢屋の様な部屋に押し込まれ、床に敷かれた布団の上に押し倒される。 「力もない、見た目も普通な奴がおまけでついて来るとは、俺たちがあの綺麗な神子様を抱くのは順番的に随分あとだろうからなぁ……本来なら廃棄するところだが有効活用してやろう」 三人の男に押さえ込まれ服をビリビリに引きちぎられた。 何だ……神子でも神子じゃなくても結局やられるのか。 「やめろっ!! 触んな!!」 迫る体を必死に押し返し足をばたつかせて抵抗すると首輪の鎖を引っぱられた。 「この首輪は奴隷の証でな……逆らえばドカンとい……」 体が急に軽くなり、乗っかっていた三人の男の姿がない。 部屋を見回すと部屋の隅で動かなくなっていた。 「……死んでる?」 「下っ端も下っ端。居なくなっても誰も気に留めないさ」 顔を上げると先程牢屋……神子の部屋で見た筋肉ムキムキ神子様がいた。 「あんた、さっきここを通った新しい神子の恋人だろ?」 恋人ではないが連れではある。 「あの神子からは強い力を感じた。お願いだ……あの神子に俺たちのこの首輪を外して貰える様に頼んでくれないか? その後の事は自分たちで何とかする!! 頼む!!」 ガバリと土下座をされ、その首に俺と同じ首輪が付いているのを見た。 死んだ男達の体をガチムチさんがトイレと思われる場所に押し込んでいる間に、奪った男の服を着て部屋を出ると高良の部屋へ向かった。 鍵が掛かってるかと思ったが開いていた。 初めフード姿の俺に警戒心を向けたがすぐに気付いたようで抱きしめられて……あぁ…初めてのキスだったんだがな……。 この首輪を外して貰えるかお願いしようとしたら高良の指がトンッと首輪に触れた。 「これ…邪魔だよな……」 その瞬間、首輪が首から外れた。 「ありがとう……じゃあ……」 これで……この首輪の事で脅されることは無いだろうが俺という存在自体が脅迫材料みたいだし。 一緒に居ない方が良いだろう。 「え!? ちょっと待てって!! どこ行くんだよ!?」 立ち去ろうとした腕を掴まれた。 「とりあえず街? 帰る方法はなさそうだし、俺は神子じゃない、俺がここに留まる意味はないだろ?」 俺がここにいる理由は高良の足枷ってだけ……。 いっそ目の前に居なければ、こいつが俺を気にする事はない。 「俺を…置いて……か? 俺はお前の為に……覚悟を決めてたのに……」 「……あ……ぁあ……」 高良に睨まれ、蛇に睨まれた蛙の様に体が固まり……声も出せなくなった。 「……っ!?」 ベッドの上に押し倒され、背後からズボンを下ろされた。 「っ!!……っ!!」 抵抗しようにも体は動かないし声も出ない。 為す術もないままお尻に高良の指が押し込まれた。 「……っ!!!」 高良の指が無遠慮に中をかき混ぜていく。 「ここ……気持ち良いの? 中がヒクヒクしてる」 苦しいし…痛いし……なのに……先程の男達とは違い、何故か嫌悪感が湧かない。 この世界に来て、ずっと俺を守ろうとしていた高良に……絆されているのだろうか? 「………あ」 お尻に熱く固いモノが触れる。 嫌だけど…高良なら…意外と嫌じゃないかも……。 自分の心に躊躇っていると……体は離れていった。 「……嫌いな男なんかに抱かれなんて……最悪だろ?俺の気持ちちょっとは分かってくれた?」 そういって、自嘲気味に高良は笑った。 「あ……あああ……」 硬直していた体の力が抜けて、声が出る。 「高良の事は…嫌いじゃ……ない」 「え……」 「好き…でもないけど……」 「……何?その…上げて落とす感じ……」 クスッと高良が笑う。 掠れた高良の声にゾクゾクとしたものが背筋を走り、体がブルッと振るえた。 「奏空……続き……してもいい?」 名前を呼ばれ、熱の籠った目で見つめられ……俺は無意識に首を縦に振っていた。 ミチミチと肉を押し広げながら高良のモノが挿入されていく。 内蔵が引きつる様な違和感に息が詰まる。 「ずっと好きだった……初めは暗い…地味な奴と思ってたけど……ふとした時に見せる笑顔を…俺にも見せてくれたらと…目で追っかけてた……」 「ん…ぅあ…あぁ……」 お尻に高良の腰があたり……全て入った事を物語る。 「可愛い…奏空……ずっと奏空としたかった……どんな女を代わりにしても全然だめで……奏空…奏空っ!!」 「あっ! あっ! ああぁっ!! 高良っ! 激し過ぎ!!」 感極まった様に急に激しく腰を打ち付けられ悲鳴に似た声が漏れてしまう。 「奏空と繋がったトコから力が全身に巡るみたい……奏空こそ神子なんじゃ……あ…すげぇ……」 「…?」 よくわかんないけど…俺も気持ち良くなってきた……。 「奏空……好きだ……好き……」 高良に耳元で囁かれるとついキュウキュウとお尻に力が入る。 それに気付いたのか、耳元にでずっと囁かれ続ける。 俺の中は太く固いモノにゴリゴリと擦り上げられた。 「あ…はぁ……あぁ……ああぁぁぁっ!!」 聴覚まで犯されて俺はあっけなく達してしまった。 それでも高良は腰の動きを止めてくれない。 「待って……まだ……イッたばっかで……あっ!」 「駄目…その体にどんだけ俺が奏空の事を好きか教えてあげないと……」 神子様として授かったお力のおかげか高良……絶倫すぎ…もう……無…理…………。 俺を揺さぶり続ける高良の腰の動きさえ、ゆりかごの振動の様に気持ちよく俺を眠りに誘った。 目を覚ますと体中ドロドロで……意識がはっきりしていた時よりも凄惨な事になっていた。 ……寝ている間にどんだけ、やられたんだろう……。 隣で幸せそうに眠る男を睨むと、 「……ん…奏空ぁ……可愛ぃ……」 綺麗な顔がふにゃんと緩む。 ……くそ……卑怯者。 毒気を抜かれて、仕方なくその辺にある布で体を拭い、軋む体に鞭を打って、透け透けな布面積の異様に少ない服だらけの衣装ダンスから、まともそうな服を探していると、フードの男達な部屋に乗り込まれた。 高良は気付かず、まだ眠っている。 騒ぐなと口を塞がれ裸体のまま外へ引きずり出されて、地面に投げ飛ばされた。 どうやら王様よりも先に神子様に触れた事にお怒りの様で剣を振り下ろされ……………ない。 剣をかざしていた男は遠く吹き飛んでピクリとも動かない……死んだのか? 「大丈夫か!?」 ガチムチさんがまた助けてくれた。 どんどんフードの男を投げ飛ばしていく。 ガチムチさん強い。 「あの……ありがとうございます」 「首輪を外してくれたの……お前らだろ?その礼だ。神子の証も奴隷の首輪もないお前なら街へ逃げれば民衆に紛れ込めるだろう……」 その首には首輪がなかった。 ガチムチさんに頼まれていたのすっかり忘れていたな……俺のが外れた時に俺のだけでなく全ての首輪が効力を無くしたのか? まぁ……結果オーライだな。 「ガチム……貴方はどうするんですか?」 「助けたい奴がいてな……それに奴らに散々甚振ってくれた礼をしたい。街の連中は普通らしいから、神子の弱点であるあんたは逃げた方が良い。なに、あの神子なら一人で何とか出来るさ」 面と向かって足手まとい宣告を受けた。 確かに俺がいたせいで高良は奴らの言いなりだ。俺はここに居ない方が良いだろう……。 高良だって、掘られるところをクラスメイトに見られたくはないだろうし……。 フードの男から服を奪うと門を探して建物から逃げ出した。 街の中では逆にフードは目立ちそうなのでフードを捨てて街の外を目指す。 幸い外門などはないらしく街道を走っていると人の良さそうなおっちゃんの荷馬車を見つけ交渉して乗せてもらった。 街がどんどん遠くなっていく……。 安堵と高良を置いて来た罪悪感が入り交じった、複雑な気持ちで街を見つめた。 泉の側で馬が休憩に入り、俺も荷台の中で休んでいると突然人が乗り込んで来て、腕を掴まれた。 「……見つけた」 「高良……!? なんでここに!! あのフードの奴らは? 王様は?」 「王宮、大破させて逃げて来た……そのあとどうなったかは知らない」 「お前とセックスした幸せの中……目を覚ましたら、お前居ないし、でっぷりした親父に乗っかられてた俺の気持ちがわかるか? ……わかんないだろうなぁ……俺を置いて逃げるぐらいだもんなぁ……」 やばい……スゴいキレてる。 髪の毛がゆらゆら浮かび上がり、パチパチと電気を帯びて火花が……。 「だって……お前があいつらの言いなりなの俺のせいじゃん……俺は居ない方が良いかと思って……」 ごにょごにょと口の中でどもっていると荷台の幌が開かれた。 「一人で何を騒いでるんだい」 馬車の持ち主のおっちゃんが荷台を覗き込んできた。 「うぉっ!? 増えてる?」 驚いたおっちゃんに高良は外行きの顔を見せる。 「勝手に乗り込んで申し訳ありません。彼の知り合いなのですが一緒に乗せていって貰えませんか?」 にっこり微笑みながらおっちゃんの手に何かを握らせた。 …………金か。 おっちゃんはニコニコしながら、馬の方へ戻っていった。 高良は俺の横にどかりと腰を下ろした。 「金なんてどうしたんだ?」 「迷惑料」 高良は鞄の中から、じゃらっと重そうな袋を取り出した。 「盗んだのか……」 「勝手に連れてこられて、世界平和の為に男に突っ込まれろとかねぇだろ……これぐらい当然だな」 「お前は俺に突っ込んだじゃん」 「あれはっ!!……好きだから…で……」 真っ赤な顔をして唇を尖らせて拗ねている。 「あの人達もお前の事、美しいとか何とか言ってたし、好きかもよ?じゃあ一緒じゃん」 「一緒にすんじゃねえよ! 俺はお前が好きだからやりたいの! あいつらはただやりたいだけ!! 全然違う!!」 「女の子達は?とっかえひっかえしてやりまくってたじゃん。告白されて『やらせてくれるなら付き合っても良い』なんて言ってた奴に言われてもなぁ」 「別に……付き合ってたからってやりまくってた訳じゃ……」 まだ何かブツブツ言っていたが、聞き取れなかった。 「あのさ……ガチムチさんは? どうなったか知らない?」 「ガチムチ?あぁ……筋肉達磨みたいなのなら逃げる途中でケモ耳のガキ連れてるの見たな……何か礼を言われたけど……何? どんな関係?」 疑いの目でじっとりと見られる。 別に高良と付き合っている訳ではないのに、悪い事をした気分にさせられる。 「輪姦されそうになった時と、殺されそうになった時に助けてくれた恩人」 「なぁっ!?輪姦?殺されそうになった!?……くそっ!! やっぱあいつら全員殺しときゃ良かった!!」 高良は自分の頭をガシガシとかき回す。 「……殺すって物騒だな……お前これからどうすんの? 王宮大破なんて……お尋ね者じゃん」 「……狂ってんのがこの国だけだと信じて他の国に行く……何とかなるさ……俺には何か能力あるみたいだし」 奏空の為なら強くなれる……と耳元に囁かれゾクゾクと身体が震えた。 そんな俺を見て高良が楽しそうに笑ってる。 何とかなる……か……そうだな。 こいつが言うなら何とかなりそうだ。 この世界の常識も何も分からないのは相変わらずだけど……少し不安だった心が安らいだ。 「……高良……本当は…心細かった」 隣に座る高良の肩に頭を乗せた。 二人を乗せて荷馬車はゆっくりと揺れ始めた。 ・・・・・・・・・・・・ 「奏空、ここ滑るから気をつけてね」 「危ないから手を繋いでいこう。奏空」 何でこんなに恋人のような扱いをされているのだろうか? こういっちゃあ何だけど、気持ち悪い。 国境を越える為に、今は山を越えている。 高良は俺をサポートする様に手を引いたり、腰を支えたり細かな気遣いを見せつけて来る。 「……別に女の子じゃないし……そんな気を使わなくて良いよ?お前が疲れるだろ?」 「俺がやりたいんだ。やらせてよ」 遠回しにやめろと言ってみたが、通じなかった。 もっとストレートに言ってやらないと分からないのかな……。 「王宮吹き飛ばす程の力があるなら……何か国境越える、いい方法はないのか?空を飛んだり……」 「……奏空が良いなら……」 肩を掴まれて、高良の顔が近づいて来る……。 乾いた音が山に響いた。 「何すんだよ!? 叩く事ないだろ!?」 「お前こそ何する気だよ」 頬を押さえて怒鳴る高良。 そんなに強く叩いたつもりは無かったが……俺の手もヒリヒリして痛い。 「キスくらい付き合ってんだから良いじゃん……」 「は?誰と誰が付き合ってんだよ?俺とお前とか言うなよ?」 高良の言葉を全力で否定すると目を見開いて固まった。 何故驚く……。 「……続きして良いか聞いたら、良いって……エッチしたじゃん……」 「一回やったくらいで彼氏面されても困るんだけど」 軒並みな台詞を吐いてみる。 合意はしたけど雰囲気に流されたのと、あの親父達にやられるよりはマシかな? って……あと、高良を置いて逃げようとした罪悪感? 「俺の事嫌いじゃないって……」 「好きでもないって言ったろ?」 高良の声が小さくなっていく。 「荷馬車の中で心細かったって体を寄せて来たじゃん……」 「未知の世界で常識が通じる同郷の奴が頼もしいのは当然だろ? お前はなんか不思議な力を持ってるし……」 「ヒドい……持て遊ばれた……」 高良はうずくまってしまった。 はっきり伝えないと……と思ったけど、はっきり言い過ぎてしまっただろうか。 「高良……早く行こう。暗くなる前に休める場所を探そう?お前が魔法で何とかしてくれるなら別だけど……」 魔法でひとっ飛びとか出来ないものか。 「無理。言ったじゃん……お前と繋がると力が湧いて来るって……首輪外せたのは奏空とキスした力だし、王宮吹っ飛ばせたのはエッチ出来たからだし……お前がやらせてくれるなら何とかなるかもしれないけど……」 「はぁ……じゃあ、せめてこんな崖っぷちじゃ無く足場の良いとこに移動するぞ。立て」 高良とのセックスはまぁ、気持ち良かったし、それでこの国を抜けられるなら儲けもの。 「……いいよ……俺の事好きじゃないんだろ……放っておいて……」 完全に殻に閉じ籠ってしまった様だ。 「うじうじしてんな……行くぞ」 無理やり腕を掴んで立ち上がらせた。 「奏空は『ファーストキス……きゃっ!!』て感じだと思ってた……」 「ご期待に添えなくて悪かったな」 どんな乙女なイメージだ。 ぶつぶつ何かを言っている高良の手を引いて山頂を目指した。 ……それから数時間後……高良の力で無事、隣の国へ入る事が出来た。
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