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第41話
庭では蝉たちがシュワシュワと重なり合って鳴いている。
「帝、汗をたくさんかいてしまっているので、せめて湯浴みをさせてください。それにまだ明るいし……」
「もうこれ以上は待てない。明るい方が佐理がよく見える」
帝は佐理の身体をゆっくりと水蓮の花の上に横たわらせた。
「初めて佐理を見た時、水蓮の精かと思った。この世の者とは思えないほど美しかった。それは今も同じだ。私がこれからすることは罪なのだろうか。聖なる水蓮の精を汚す私には天罰がくだるかも知れない。けれど、たとえ雷に打たれてこの命を落とそうとも、佐理を私のものにできるのなら悔いはない」
「帝ご自身が天なのに、誰が帝に罰をくだすと言うのですか。それにもしそんなことになってしまったら、私は迷わず帝の後を追います」
帝は佐理の言葉に意表をつかれたのか、わずかに目を見開き、そして緩ませた。
「可愛いことを言うな、優しくしてあげられなくなる」
「どうか帝がお好きなようにしてください。壊れてしまっても構いません」
「佐理」
帝は深い口づけを交わしながら、もどかしそうに佐理の空色の直衣を脱がせる。
口内が帝の舌に翻弄されている間に、佐理の白肌が露わになっていく。
帝の舌は命を宿したように佐理の首筋を這い回った。それだけで晒された上半身のうぶ毛が立ち上がる。
濡れた舌先が鎖骨の形を確認するかのように這う。
帝の骨太で長い指が佐理の肌の上をさわさわと彷徨いながら何かを探している。
固い桜の蕾のような薄桃色のそれを見つけると、指の腹で小さな円をかくように押し付けてくる。
刺激を与えられ、ぷくりと頭をもたげた芽は今度は左右になぶられる。
薄桃色がだんだんと濃さをましてくる。鎖骨辺りを徘徊していた舌がいきなり新芽を襲った。思わず背中を仰け反り、帝の身体を押しやろうとした手は簡単に帝の手に捕まり、褥の上に縫い付けられる。
指とは違う生温かく淫らな舌は柔らかいのに鋭い刺激を生み出す。
不意打ちのように歯で甘噛みをされ、唇で挟まれ、舌先でチロチロと弄ばれたかと思うと、音を立てて吸われる。
もう片方の新芽も絶えず指先でいじられながら、舌の訪れを待つ。
濡れた芽は空気にひんやりと冷たく、それさえも疼きをもたらす刺激になった。
二つの小さな突起と佐理の中心は見えない糸で繋がっているかのように、突起が侵略を受けると大きくその糸を弾いた。
断続的な電光石火のような快感が糸を伝って下りてくる。
何度も弾かれるうちに、佐理の中心も新芽と同じように頭をもたげ始める。
書物で学んで知識はあったが、佐理は生物学上飾りでしかない男のこの部分に本当に快感が生まれるのか半信半疑だった。
けれど今は身をもってそれが嘘でないことが分かる。
袴の下で硬さを増しつつあるそれが、布の上からやんわりと包まれる。
「佐理」
佐理自身に添えられた帝の手がゆっくりと上下する。
袴の上に指貫(さしぬき)も履いているのがもどかしい。
けれどそれを感じたのは佐理よりも帝のようで、帝は佐理の指貫と下袴を脱がせた。
薄い布の下着だけになったそこに、膨らんだ佐理の形がはっきりと見てとれた。
薄布を通して帝の手の温もりが伝わってくる。
数回しごかれただけで、痛さを感じるほど固くなったそこに帝は顔をうずめた。
熱い吐息と一緒に甘噛みされる。浮きそうになった腰を押さえられた。
そしてついに薄布が取り去られた。
帝は上体を起こすと、全てが露わになった佐理の身体を見下ろした。
指の一本も触れられていないのに、帝の熱い視線に晒され、じりじりと身体が焼けていく。
充血して固くなった両胸の新芽と佐理の中心は身悶えするように、帝の指と舌を欲している。
特に真ん中のそれは我慢できないと、ヒクヒクと懇願するように頭を揺らす。
「淫らで、そして美しい……」
「帝、恥ずかしいです」
佐理は羞恥で耐えきれず、耳の縁まで赤くなっている顔を両手で隠した。
「そのまま感覚を楽しむといい」
覆った手の内側で、帝の言葉の意図を考えていると、佐理の中心がやわらかく生温かいものですっぽりと包まれる。
その感触に全身が総毛立つ。
「あっ……」
思わず喉の奥から声が出る。
慌てて起きあがろうとするが、次の大波に呑み込まれる。身体が痺れ、片手を伸ばすのがやっとだった。
帝は佐理の中心を口に含んだまま、その手を握る。
ゆっくりと帝の頭が上下に動く。
恍惚とした快感が佐理の中心から広がってくる。
それは熱い海に沈んでいくようだった。
腰が浸かり、じわりじわりと二つの新芽をたずさえた胸が沈み、喉、そして足はつま先、頭は最後の髪の一本の毛先まで呑み込まれる。
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