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4 水族館とあなたの隣とダメな僕4

 前回打ち解けたと思ったが、また時間が少し戻ってしまい緊張が芽生え始めたようだ。頬を赤らめた顔で少し俯き加減にしているだけなのに、それだけで可愛いと思ってしまう。もし発情している彼がこんな表情を見せてきたら、迷わずそのうなじに歯を立てることだろう。しっかりと抗フェロモン剤を飲んでおかないと衝動で噛んでしまいそうだ。  碧の顔を見ただけで悶々としてしまう自分にしっかりと「大人の余裕」という猫を被り、助手席へとエスコートする。さりげなく握った手の細さに、手折ってしまいたいという欲求が芽生える。 (だめだ、だめだ。今ここで変なことをしてしまったらお見合いがパーになる)  必死で己の欲望を押さえつけ、助手席へと導く。 「一輝さん、ありがとうございます」  ふわりと笑みを浮かべた謝辞にすら鼻血が噴き出しそうだ。  だが鉄壁の仮面で余裕の表情をその面に張り付けるといそいそと運転席へと向かう。 (やっぱり可愛い!)  だめだ、このまま自分のマンションに連れ帰ってしまいたい。  すぐに押し倒して、なにも知らないであろう身体にあんなことやこんなことをしたい欲求に駆られる。大人の余裕なんてはぎ取って獣に戻ってしまえと囁く心の悪魔を追い払い、平常心を取り戻すために大きく深呼吸をしてから車を出発させる。  水族館と遊園地が併設されている近郊の水族館へと向かう。少し子供っぽいチョイスかもしれないと思ったが、聞いてみると水族館すら行ったことがないという。 「だから今回は水族館にしたのかい?」 「はい……一輝さんにはつまらないかもしれないけど……」 「いや、あまり行かないから実は私も楽しみなんだ」 「そうなんですか、良かった」  ほっとした顔が見れないのが辛い!  だが今見てしまったら絶対に別の目的地に向かいそうだ。いくらなんでも初めてがラブホテルは可哀想だ。せめて綺麗なホテルか……やっぱり色々揃っている自分のマンションが一番か。  そんなことを考えながら運転しているなど知らない碧は楽しそうに車窓を見ている。他愛ない話をしながら高速を滑るように走り、目的地へと向かう。東京湾に面した水族館は家族連れやカップル同士で賑わっており、楽しそうな声があちらこちらから聞こえてくる。  ジェットコースターからメリーゴーランドまで揃っているアトラクションに興味津々で見つめる碧は、一輝に肩を抱かれることに慣れてしまったのか恥ずかしがるそぶりを見せなくなった。むしろ、人の多さに驚き怯えるように身体を寄せてくる。手練手管でしな垂れかかってくるのとは違い、一輝だけを頼りにしてくるその仕草が庇護欲を掻き立てる。  守ってやりたいという気持ちが会うたびに大きくなっていく。  いつも隣にいて彼を守って一緒に歩いていきたい。不思議とそう思わせる魅力があるのだ。

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