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6 部屋とワイシャツと膝枕7

 一輝は慌てて起き上がると、その動きに気付いたのか碧もゆっくりと目を開いた。 「一輝さん、おはようございます」  半分寝ぼけた声が可愛らしく、思わずキスしようとして慌てて狙いを髪に移した。 「申し訳ない、眠ってしまった」 「いいんですよ、一輝さんが疲れてるのわかっていますから」  ちくしょー、なんでそんなに可愛いんだ! 思わず抱きしめてベッドに引きずり込みたくなるだろうと心の中で叫びながら笑顔を張り付け自分を必死で抑える。結婚したらこれが毎日になるのかと思うとそれだけで萌え死にしそうだ。  気が早すぎるまだプロポーズだってしていないのにと良心が窘め、結婚前提なんだからもう好き勝手してもいいだろうと本能が嘲笑ってくる。  こんなにも可愛い生き物がこの世に存在するなんて、しかも将来自分のパートナーになるなんて、宝くじを一発高額当選したようなものだ。  あぁこのままプロポーズしてしまおうか。そして既成事実を作ってしまおうか。  いやいや早すぎるだろう。きちんと結果を出してプラン通りに進めないと。  まだ菅原家が提示してきたノルマには届いていない。  それを早い段階で……出来れば碧の夏休み中に出してからでなければ。  眠ったことでたっぷりと休まった脳がフル回転する。 「随分と遅くなってしまったが、昼食にしよう。今からだと店屋物になるが碧くんはなにが食べたい?」 「僕、店屋物って食べたことがないんです。どんなのがあるんだろう」  一輝が持ってきたメニューを覗き込んで碧が嬉しそうな顔をする。  ファストフードと縁遠い生活の碧にはこんな些細なものでも好奇心をくすぐるのだろう、小さな幸せを目一杯楽しむ姿の愛くるしさに思わず一輝も目尻を下げてしまう。 「なにが食べたい?」 「ラーメンってどんな食べ物なんですか?」 「ならそれにしようか」  飲食店の多い地域だし、昼をとうに過ぎてしまっている時間だから注文したものはすぐに届いた。  小さなダイニングテーブルでよくある中華料理屋のラーメンを堪能しながら、猫舌でふぅふぅと麺を冷ましながら美味しそうに食事をする碧の表情を堪能しながら腹を満たしていく。  そして時間になり碧を送り届けた後、一輝はマンションに戻り、洗濯機の前で困った顔をした。  気を利かせて乾燥までかけたワイシャツはしっかりとシワになっていた。アイロンのない一輝の部屋でそれをリカバリする方法はなかった。 「さて、これからクリーニングに持ち込むか」  シワだらけのワイシャツを集めながら、困っているはずなのにどうしてか顔が緩んでしょうがない。

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