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7 観覧車と花火とプロポーズ1

 もうすぐ誕生日だ。  八月下旬にある自分の誕生日はいつも夏休みにかかってしまうから、家族以外に祝ってもらったことはない。しかも毎年夏休みの宿題に追われて自分でも落ち着いて何かをする日ではなかった。  だけど、今年は違う。  碧はその日が楽しみで仕方ない。  気が付けば誕生日まであと何日かと数えてしまうほどだ。そしてその日に一輝は夏季休暇を取り、平日にも関わらず一日一緒にいてくれるという。それだけでも嬉しいのに、碧の行きたい場所を聞いてきてくれた。  今まで行ったことのない場所で憧れてしょうがない所があった。  しかも今年は自分の誕生日に開催していると知って、居ても立ってもいられずそこを口にした。 「花火大会?」 「そうです……ダメかな?」 「わかったよ。行けるようにしよう」  いつも五時には帰宅をしなければならない碧にとって、夜空に打ち上げられる光の芸術と屋台の熱気を感じたいと思っていた。自宅の屋上からも小さく見えるが、もっと間近に見てその熱気を感じたいと思っていた。  碧のワガママにいつも付き合ってくれる一輝はすぐに了承してくれた。そしてその日だけでも門限を延ばせないかと家族と交渉してくれた。  嬉しかった。  今までずっと我慢していたことが、一輝がいるとなにも我慢しなくていいのが。そして碧の願いを叶えてくれるのが。  どんな小さな願いも一輝は魔法使いのように叶えてくれる。  行ってみたかった美術館も、観たかった絵も、憧れていた場所も、碧がお願いする前にデートコースに組み込んでくれる。想像と違った場所もあったが、それも楽しくて、彼がそばにいてくれるだけで自分が普通になれたような気になる。なんでもできそうな気持になる。  優しい一輝が隣にいて一緒に楽しんでくれるのも嬉しい。 (でも一番うれしかったのは、一輝さんの部屋に行ったことかも)  仕事が忙しくて片づけが行き届いていないと言っていた通り、服が散らかった部屋だったけど、部屋中に一輝の匂いがしてドキドキした。一緒に服を集め洗濯機に持っていくとき、これらをそのまま自分の部屋に持ち帰りたい衝動に駆られた。一輝の匂いに包まれたいと強く思って、振り切るようにすべてを洗濯機に入れていった。どうしてと聞かれても碧にもわからない。ただ一輝の匂いのするものに包まれたらとても幸せな気持ちになれるような気がするのだ。彼の香りに包まれたその中にいて彼のことだけを考えたいと切望した。  もしかしたら自分はちょっと変態なのかもしれない。  一輝が好きすぎるあまりに彼の持ち物すべてが欲しくなってくるのだ。  知られたらきっと嫌われてしまうかも知れないから、こんな気持ちをそっと隠す。

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