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7 観覧車と花火とプロポーズ3

「途中で高速を降りたほうが良いね」 「これってもしかして、皆花火大会に行こうとしているの?」 「あぁそうだと思うよ」  まさか花火大会にこれほどの人が集まるなんて想像もしていなかった。一輝は高速を降りそれでも車通りの多い道を走っていく。四方八方から車が通りすぎていく交差点も恐れることなく丁寧に進み、海に面したホテルの地下駐車場へと入っていく。 「この周辺を散策しながら時間が来るのを待とう。このあたりならそれほど混んでいないからね」 「会場はこの傍なんですか?」 「車で一時間くらいかな。でも会場の周りは人でいっぱいだからね、近づいたら帰れなくなるだろうね」  帰れない?  一体どんな状況なのだろう。碧はあまりのことに、自分が大変なお願いをしてしまったのかと心配になった。自分は世間知らずだと認識しているが、本当になにもわかっていないようだ。花火大会に高速が渋滞になりそうなほど車が集まることも、帰れないほど人が集まることも何も知らなかった。 「ごめんなさい、僕が無理なお願いをしたから……」 「花火大会くらい、どうってことはないよ。それに、碧くんの願いを叶えるのは私だけの役目だろう。だからこれからもたくさんお願いをしてくれ」 「たくさんって……一輝さんが大変になっちゃいますよ」 「君の願いを叶えられるのが本当に嬉しいんだ。叶ったときの喜ぶ碧くんの顔を見るのも、ね」  甘く優しい笑顔でまた髪にキスを落とす。もう何度もされているのに、全然慣れることがない。抱きしめられた時のように体温は上がり、心音が早くなりそして、身体の奥が熱くなる。  おかしくなる自分を必死で隠しながら一輝の後に続いた。  ホテル周辺には小さな遊園地があり、楽しそうな声が響いてくる。  以前一輝に連れて行ってもらった水族館に併設されている遊園地よりもずっと小規模で穏やかなアトラクションしかないが、それでも楽しい雰囲気を目一杯醸し出している。それに、大きな観覧車まである。  碧がぼんやりと観覧車を見つめていると、すぐに一輝が気付く。 「あれに乗ろうか」 「えっ、でも……」 「時間はまだあるからね。18時半まではこのあたりをウロウロしようと思っていたから丁度いいね」  すぐにチケットを購入し、順番待ちの列に並ぶ。  アトラクションほどは混んでいないため、すぐに順番がやってくる。一輝にエスコートされ、生まれて初めて観覧車に乗った。動いているのに気付かないほどゆっくりと回り、気が付けばもう地上は遠くなっている。 「僕、こういうのに憧れていたんです」 「こういう?」 「うん、観覧車って幸福の象徴だなって思うんです。絵本とかでもすごく楽しかった思い出みたいな場面で必ず出てくるでしょ。だからどんなものなんだろうってずっと憧れていたんです」

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