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7 観覧車と花火とプロポーズ4

 その象徴に一輝と乗れたのが嬉しい。告げると、なぜか一輝まで顔を赤くした。 「そういう顔はね、もう少し先に見せてくれると嬉しいな」 「どうしてですか?」 「色々とね、こっちも我慢しているんだよ」 「なにを?」  癖で首をかしげて訊ねる。 「……そのうちわかるよ」  髪をくしゃくしゃと乱される。 「やめてくださいっ!」  一輝に会うためにせっかく綺麗にしてきたのに。だが見せたかった相手は楽しそうに笑いながら碧の髪を綺麗に手櫛で整えてくれる。柔らかすぎてハラハラと指の間を零れる髪が窓から差し込んでくる光で透けたように見える。  やっぱり好きだ。  この人も、この人と見る世界もとても綺麗で、手の中に包み込んでそっとしまっておきたい。  できないから、一輝とデートした後にはキャンバスに思い出を閉じ込めておく。ずっと消えないように。  今日はきっと花火とこのシーンだ。  時間をかけて一周回った観覧車を降り、すぐそばにあるという美術館を見て帰ってくると日は暮れもう丁度いい時間になっていた。 「碧くんこっちにおいで」  車を停めたホテルの裏手に回り、緑屋根の小さな建物へと向かう。  そこは小さな船着き場だった。 「船?」 「陸は混んでるからね、海から観ようと思って」 「すごい……」  到着しているクルーザーに乗り込み、中へと入っていく。大きなソファとテーブルが備え付けられ、二人で乗るには十分な広さだ。  大きなソファに腰かけるとすぐにクルーザーが走り出す。  運ばれた炭酸の飲み物を口にしながらコンビナートの夜景を堪能する。車で一時間の距離も、船でならすぐだ。以前一輝に連れて行ってもらった水族館を海から眺め少し離れた場所に停まり花火が上がるのを待つ。 「海から見ると思ってませんでした」 「碧くんの驚いた顔を見たくてね。それに、人が多いからここからのほうが静かに見れる」  一輝も楽しそうに同じソフトドリンクを口にした。  その間に食事が運ばれる。  イタリア料理のメニューが小さなサイズで何品も並び、それを摘まみながら上がる花火を堪能した。 「綺麗だね、一輝さん」  パァァンと音がしてすぐに夜空に花が咲き、すぐに散ってしまう。まるで花の一生を数秒に短縮したかのような世界だ。  空でハラハラと散ってしまうその瞬間が碧の心を掴んでいく。  あまりの美しさに食事を忘れそうになる。一輝に注意されなければ本当に口を開けたままずっと見続けてしまいそうだ。  しかも一回ごとに上がる種類が変わっていくし色も何色も取り揃えられている。  写真で見るよりもずっと華やかな光景に釘付けになる。 「碧くんがこんなに喜んでくれると嬉しいね」 「ぁ……ごめんなさい。僕みっともない顔してる……」 「みっともないんじゃなく、可愛くてすごく楽しそうな顔だったよ」 「嘘っ!」

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