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7 観覧車と花火とプロポーズ7

「お帰り、碧」 「ただいま帰りました。ワガママを聞いてくれてありがとうございます」  初めて遅くに帰ってきた自分を心配して集まったのだろうか。  次兄の梗が目ざとく碧の手首を飾った時計に目を止めた。 「それ、どうしたんだ碧」 「一輝さんに貰ったの。婚約指輪代わりの時計だって」 「なるほど。受け取ったということは了承したのか」 「うん……あれ、ダメなの?」  長兄と次兄が複雑な表情をしている。反して両親は嬉しそうだ。 「碧、本当にあいつでいいのか?」  あいつとは一輝のことだろう。なぜ長兄と次兄が険しい顔をしているのか分からない。でも答えは一つだ。 「うん僕、一輝さんと結婚したい。だってすごく優しくてずっと傍にいてくれるって約束してくれる。一輝さん今まで一度も僕との約束を反故にしたことないから……兄さんたちは反対なの?」  気持ちを伝える語彙が豊富じゃない碧は上手く言えないもどかしさと、いつも大切にしてくれる兄たちが険しい顔をするのが悲しくて涙ぐむ。  どうしてそんな顔をするのか理解できない。  一輝はいつも碧に優しくて一番に考えてくれる人だ。なにより、碧自身が一輝と一緒にこれからの時間を過ごしたいと願っている。  今まで週末ごとにデートを重ねてきてたのに、ここに来てプロポーズされた日に険しい顔をするなんて酷い。 「碧は天羽さんが好きなの?」  母の言葉に頷く。  初めて会った時から好きになったけど、あの時より今の方がずっと好きになってる。  一輝と結婚したい気持ちに迷いはない。  週末にしか会えないのが寂しいとすら思っていた。ずっと彼の隣にいたい。彼と過ごしたい。 「今までみたいに楽しいことばかりじゃないんだぞ、結婚というのは」 「分かってるよ。でも、一輝さんと結婚したい。玄兄さんはどうして意地悪なことばかり言うの?」  ポロポロと涙を零す碧に、末弟に甘い長兄が言葉を飲み込む。その隣で次兄がボソボソと呟いた。 「いや、案外噛まれてから離婚させてしまえばいいのか。そうしよう。誰があんな奴にくれてやるものか」  あまりに小さい声で内容を理解したのは長兄だけだ。 「僕、一輝さんと結婚したい。もう決めたから」 「そうだな。碧の気持ちを優先させよう」  今まで静かに聞いていた父が一言発し、それで話は終了だ。絶対的権力を持つ父の決定は菅原家の決定と同義だ。  碧は顔を明るくさせた。 「お父さんありがとうございますっ!」  やった、結婚を認めてもらえた。  碧は父親に抱き着いた。その子供っぽい仕草に父親は少しだけ寂しそうな顔をしたが舞い上がっている碧は気付かないままだ。  一輝と結婚できるそれだけで一生分の誕生日プレゼントを家族から貰ったような気持ちになる。 「天羽さんと話を進めなくてはねぇ」  母親だけがこの空気の中のほほんとこれから先のことを話し始めた。  苦虫を噛みつぶしたような兄たちを横目に。

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