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 互いの身体を石鹸の泡でまさぐりながら清め、シャワーで流しながら貪るようなキスをした。  呼吸が溶けあってしまうのではないかと思うほどのなまめかしいキス。久遠の頑強な舌にこれでもかと口腔内を犯される。久しぶりの性的なまぐわいに、二人は興奮していた。  奪うように強く舌を求めた。口許で弾ける水音がつやめきながら室内に響く。 久遠にすがる碧斗を久遠が支える。碧斗の萌しかけているものに片手が伸びてきた。  笠の上を撫でられる。円を描きながら指を滑らせ、時に触るか触らないかのタッチで(へり)をこすられれば、下腹部にたえられない疼きが興って、碧斗は激しく身をよじらせた。 「実は少しだけ、碧斗を疑ったんだ」  器用な手から確実に与えられる快楽に負けて、いったい何を疑られたのかという疑問が霞む。 「――!」  性器が、愛する男からの愛撫にむせび泣いていっそう欲情する。先端の窪みを指先で繊細にいじられれば、快楽と痛痒が一点に刺し込み、腰がみっともなく痙攣した。 「……っ、……っ」  じゅっと先走りが漏れた。久遠の肩口に額を預けて俯いているから、久遠によって繰り広げられる手戯がいやでも目に映る。  久遠のシャンプーしたての濡れた髪が碧斗の額を優しくくすぐってくる。久遠自身もそうとう威きり勃っているのに、久遠は呼吸一つ乱さないで碧斗のものを攻めたててくる。 「また男娼に戻ったのかと――」  不意にペニスから手を離され、刺激の残り香で腰が切なく悶えた。もっと、もっとと、刺激を求めて腰がヒクつく。碧斗は首を振って否んだ。 「そうだよな。きみはもう、そんなことはしない。疑ったりしてすまなかった」  久遠は少し身をかがめ、己の陰茎を碧斗のものにひたりと沿わせる。久遠の長大な怒張と彼の手のひらとで陰茎を包まれて、ゾクリとした快感を背筋に覚えた。  久遠がゆっくりと腰を遣う。腰から背骨にかけて、焼かれるような熱い電流に襲われた。快楽に腰が抜けて、声にならない叫びが碧斗の喉を突く。  碧斗は喘ぎ喘ぎ、小刻みにかぶりを振った。二人の陰茎を包む久遠の手のひらの圧が強まり、一方で陰茎同士の摩擦によって一気に至精しそうになる。 きつく、きつく、眉根を寄せた。碧斗の前髪からはぽたぽたと雫が垂れた。  下半身に溜まったものが今にも噴き出しそうになる。射精はもう、すぐそこだった。 「…! …、――ぅぁ、…、…ぅ、…ぅ、」  こんなふうにされたらひとたまりもない。尿道が灼けつき、射精への欲求が熾烈になった。 「とても綺麗だ。きみはどんな時も、綺麗だ、碧斗」  灼熱が尿道を駆けのぼってくる。  白濁が勢いよく噴き出した。それは思いがけず、長く、多く、久遠の裏筋までをもはしたなく濡らす。その喜悦のために碧斗は失神しかけた。  苦しく息を切らす碧斗の肩を久遠が抱き寄せる。全身に震えがきたして、絶頂はなかなか止まりそうになかった。  碧斗は久遠の望むまま射精することで、久遠はその切ない身体を抱きしめることで、互いの確かな愛を差し出しあっているような時間が過ぎた。 「初めて碧斗の声を聞いたよ。素敵な声だった」  久遠が耳元で囁いた。  そうだ。そういえばさっき、喉を音らしき塊が通った。あれは自分の声だったのか。  まだ朦朧とする意識の中で、碧斗は微かに響いた自分の声を思い出す。 「そろそろ、部屋に行こうか?」  甘やかに訊ねられ、頷いて答えた。  風呂場を出、互いに水気をタオルで拭きとる間も幾度となくキスを交わす。 裸のまま手を繋がれて、二階への階段をのぼった。  猛々しい久遠の陽物はまだ盛っていて、目に入れば碧斗の身体の奥がどうしようもなく反応してしまって、したたかに疼く。早く抱かれたい。あの長大なもので射抜かれて、肉体の奥深くで久遠を感じたい……。  碧斗の部屋に着くなり、絡みつくように抱き合いながらベッドに横たわった。  バスルームでよりももっと激しいキスになった。  唇に唇を深く咬ませ、久遠の舌が滑り込み、碧斗もめちゃくちゃに久遠の中を貪った。成熟した雄同士が繰り出す容赦ないディープ・キスだった。めくるめく時間の後で、ようやく唇を離すと、お互いの口元は顎まですっかり濡れそぼってしまっていた。  その後で久遠の唇が碧斗の耳に触れる。ゆっくりと胸元に流れ、時折きつく肌に吸いつかれた。その度に碧斗の中ではぞくぞくとした期待が暴れた。  久遠の指先が碧斗の乳暈をかすめる。乳嘴のまわりを丹念になぞられた。  甘い刺激に瞑目すると、与えられる感覚がいっそう鋭さを増す。乳暈ごと巧みに揉まれ、碧斗の乳嘴は両方とも固く立つ。指先の中でもてあそばれれば、秒を追って快感が全身に広がった。  不意に突起の先端をねっとりとねぶられた。 「ぅ――――!」  甘苦しく喘ぐ。目を固く閉じ、いやいやと首を動かした。 「ん…っ」 「大丈夫。声を出していい。きっと出せる」 「んぅ、」  こりっと甘く歯を当てられて跳ねあがった。それでも久遠の乳嘴への刺激はやむことなく、まもなくいやらしい衝動が熾火のように恥骨の底でくすぶり始める。  萌した膨らみに手を添えられ、巧みな手技を受け、リズムよく扱かれて、いつしか碧斗は突きあげる情動のままに激しく腰を突き立て、再び射精していた。今日、二度目の射精だった。 「ぁ、ぁ、――、」  ひくひくと、全身がみっともなく震える。快楽に溺れて窒息してしまいそうで、久遠の肩を掴んで碧斗はとりすがった。  しばらく抱きついていた後で、自分もと、久遠の乳嘴にむしゃぶりつく。  固く粒立ち、男らしく健やかな茶色をしている小さな乳嘴を、じゅくじゅくと音をたてて夢中でしゃぶり、したたかに舌を押し当てた。粒がツクンと抵抗を返すのを感じながら、思うたけねぶった。 「上手だ。とても気持ちがいい」  誉めてもらい、髪を撫でられればいい気分になる。口の周りをびしょびしょに濡らしながら、碧斗はさらに真剣に、両方の乳嘴と乳暈を舐めまわした。久遠のものはこれでもかと堅くなって碧斗の肌を刺激する。碧斗はそれにも感じて淫靡に腰をゆすった。

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