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 もう我慢できなくなり、久遠を起こした碧斗は自ら仰向けになって足を開き、恥ずかしい部分のすべてを久遠の前に曝け出す。  あられもない恰好を目にして情欲を顔に浮かべた久遠は、枕許のローションを手のひらで温めながら碧斗の後孔をほぐし始める。いよいよ事の始まる期待に、碧斗の心臓は激しく早鍾を打った。  プツッという衝撃と共に指の侵入を受ける。  さらに大きく股を開き、全身を折れば、少しずつ、優しく、柔らかに、たっぷりと慣らされる。久遠はこんな時でもけして焦らないのだった。  媚肉の中の格別敏感な部分を嬲られた。途端、身の弾けるような快楽に襲われる。碧斗は仰け反り、全身を淫らに痙攣させた。 「あ…っ、ぁ…。はぁっ、――ぁ…っ」  碧斗の先端からは再び蜜が伝い、腹部までを無様に濡らす。 「不感症じゃない、きみは、ちゃんと気持ちよくなれる」  久遠が囁く。穏やかさゆえの色気を持つ、男らしい大人の声で。  やがてすっかり柔くなった入り口に久遠の怒張があてがわれた。気が遠くなるほど待ちわびていた久遠のセックスだった。 (入って…! 入って…!)  待ちきれずに自分から咥え込もうとしてしまう。ずくんとしたしたたかな衝撃に、碧斗は喜悦した。 「ぅ…!」 「つらい?」  心配そうな声にかぶりを振って否む。久遠は最初の時からこんなふうに心配して、やさしかった。でも違う。今はつらくない。たまらなく気持ちがいい。 (――進んで…もっと…もっと深く…)  久遠をもっと感じたい。頂戴、頂戴と、腰を自ら腰を沈ませながら久遠を飲み込んでいく。  自分から拙いピストンを繰り出せば、節度などとっくに忘れた蜜口からまた白濁がぼたぼたと漏れた。  久遠がゆっくりと腰を遣ってくる。その嵩高な男根が碧斗の腔内を押し開き、そして窄ませ、また押し開いて、ズクンと奥を突く。その繰り返しがたまらない。  剛直な動きを重ねられ、やがてスピードが増し加われば、碧斗の口からはリズミカルで官能的な、濡れた吐息がたて続けに漏れる。  途轍もない快感だった。  我を忘れるほどの快楽だった。 「愛してる、碧斗…!」  碧斗の髪に久遠が指を滑り入れる。それから奥へと腰を突きたてぐるぐると中をかき回した。めくるめく性の法悦に意識が白みかけた。  絶え間なく揺らされ、時に意識が飛び、肌を打ち合う音がなまめかしく部屋に響く。  もう何も考えられない。もっともっとと尻を振り、節度を失くした後孔が口を開いて求めるだけだった。忌憚のない久遠の本懐をぶつけられ、碧斗もまた劣情のまま久遠を貪り食った。 「…ぁ! …っ、…んぁ、…っ、――っ」 「中で、イク…!」  苦しげに呟く。  久遠のものがしたたかに脈打った。碧斗の腔内の最奥で飛沫が撒かれれば、滾る熱量に身体ごと持っていかれそうだった。  この激しい律動の間にも、碧斗は幾度となく射精していた。気持ち良すぎてイキっぱなしだった。  感極まったように久遠が碧斗を抱きしめる。碧斗も頼りがいある首筋に腕を回し、汗を滲ませている愛しい久遠を抱きしめた。碧斗も汗だくだった。火照った二人の肌が甘く吸いつく。 「……久遠さん――――!」  瞬間、はっとした。自分は今、何と発したのだろう?  久遠が上体を跳ねあげる。  上から驚いたように碧斗を見つめ、それから笑顔を弾けさせた。 「ほら。出たじゃないか…!」 「ん…!」 「きみの声だ。きみの言葉だ」 「うん。久遠さん――――!」  きつくいだかれる。  汗だくの身体をこれでもかと重ね合わせた。   (了)

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