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11 念願叶って

 高井は俺を仰向けにすると、ゆっくりと覆い被さってきた。  俺の両脇に肘を突くと、顔を近付ける。逆光になった雄の顔で、高井が聞いてきた。 「安田先輩。その……キス、しても怒りませんか?」 「えっ、キ、キス?」 「はい。安田先輩としてみたいです」  まさかキスまでねだられるとは思ってもみなくて、俺は一瞬で固まる。だってそうだろ? ついさっきまでただの可愛い後輩だった筈の高井に抱かせてくれって頼まれて「はい」って言っちゃったんだぞ!? もうすでに俺の脳みそはキャパオーバーだ。 「……安田先輩?」  不安そうな声を出す高井。俺の先輩心がキュンと反応する。俺はこれに弱いんだよ……!  そんな俺が咄嗟に言い放った言葉は。 「た、高井に任せる……!」  だった。  俺の言葉を聞いた途端、パアアッ! と花が開いたように目を輝かせる高井。  あ、可愛いかも、なんて思った次の瞬間、俺の口は高井に荒々しく塞がれたのだった。 ◇  高井は俺の全身をくまなく愛撫し、身体中にキスマークを付けていく。  薄っぺらいだけの色気なんて皆無な俺の胸にも嬉しそうにしゃぶりつくと、舌と指を使ってこれでもかというくらい執拗に舐めてきた。こんなところ、舐めて何が楽しいのか分からない。でもずっと嬉しそうな高井が「先輩……っ、(ほまれ)さんて呼んでいいですか?」と可愛らしく尋ねるものだから、身悶えていた俺は「うん」と答える。  それからの高井は、「誉さん、誉さんっ」とうわ言のように呟きながら、俺の小さな乳首がぷっくりと腫れ上がるまで吸って舐めて虐めるのを止めてくれなかった。  高井が耳の中に舌を突っ込んでくると、全身がぞわぞわして思わず変な声が漏れる。 「は、……んぅ」  高井は俺に熱い吐息を吹きかけながら、実に幸せそうに笑うんだ。 「誉さん、可愛い……っ! ここはどうですか? ここは気持ちいい?」  甘すぎる声色で、新しい場所に触れる度に聞いてくる。俺は羞恥とあり得ないほどの多幸感から、ただ小さく「ん、ん」と頷いて返すこと以外できなかった。  俺の鼠径部から内ももが高井のキスマークでびっちりと埋まった頃、もう息も絶え絶えで仰向けに寝そべるだけの俺の足を、高井が俺側に折る。お尻の下に枕を挟み入れると、俺の後孔が丸見えの状態にされた。  はあ、はあ、と先ほどからずっと苦しそうな息を繰り返している高井が、火照った顔でじっと俺の蕾を見つめている。 「あんまり見るな……」 「嫌です。僕が誉さんのハジメテなんです。誉さんの全てを僕は見たい」 「お前な……」  俺がオメガならいざ知らず、ただの平凡ベータ、しかも男相手に何を言ってるんだか。呆れて苦笑すると、高井がキュンとした顔になった。 「真っ赤になった誉さん、可愛い。誉さんの全てを味わいたい……!」 「え?」  と、高井は止める間もなく俺の蕾に舌を伸ばし――ぐぽっとそのまま中に挿し込んだ。 「んんっ!?」  そのままぐっぽぐっぽと身体を前後に揺らすと、滑らかで先程の指よりも遥かに温かい熱が、俺の中を蹂躙する。 「あっ、やめっ、汚いからっ」  抵抗してみせるも、高井の力の前に俺はあまりにも無力だった。伸ばした手はあっさりと掴まれ、高井はそのまま一番奥まで舌を突っ込む。高井は目を見開く俺を上目遣いで見ると、目だけでにこりと笑った。次の瞬間、口をキスの形にすぼめると、俺の後孔に思い切り吸い付く。 「んーっ」  ちゅぱっ! と大きなリップ音を立ててとんでもないところにキスをした後、じゅぽん! と音を立てて舌が引っこ抜かれた。出したままの高井の舌と俺の蕾の間を、銀糸が結ぶ。  高井のパンツは、今やぐっしょり濡れて酷い状態になっていた。窮屈にしまわれた陰茎を、満を持して高井が取り出す。むわあ、と男臭い湯気が立ち昇った。  高井の立派すぎる陰茎の先に付いている亀頭、その鈴口から、透明な液体がぽたりと落ちる。次から次へと溢れてくるカウパーに、俺の視線は釘付けになった。  高井は腹に付くほどに勃ち切った雄の象徴である大きな陰茎の根本を掴む。ひたすら俺に奉仕し続けていた高井は、すでに汗びっしょりだ。ぬるりと滑る手で俺の後孔の周りの肉を押し開くと、ぴたりと照準を合わせた。  とろりと蕩けた笑みを浮かべる高井。 「誉さん、大好きですよ」 「高――、」  俺の声は、最後まで発せられることはなかった。散々解されて広げられた穴だったけど、指と高井の立派すぎる雄との大きさはあまりにも違った。 「く――っ」 「誉さん、力を抜く時は息を吐くんですって」 「そ、そんなこと言っても、」 「ほら、僕の背中に手を回して下さい。力を込めても絶対大丈夫です。僕はここにいますから」 「う、うん」  俺に覆い被さってきた高井が、愛おしそうに俺の頬を撫でつつ耳元で囁く。 「ほら、僕と一緒にやってみましょう。吸ってー、吐いてー」 「ふ、ふうーっ」  すると高井が言っていたことは本当で、先程までガチガチで絶対入らないと思っていた高井の亀頭が、きゅぽんと入ったじゃないか。  高井が俺の頬を撫でてご褒美のキスを降らせる。 「誉さん、いい子。よくできました。じゃあもう一回やってみましょうね」 「う、うん……!」  なんだか先輩と後輩の立場がすっかり入れ替わってる気がしないでもなかったけど、今の俺はそれどころじゃなかった。とにかく中に入ってこようとする圧が凄くて、だけど俺を優しく抱こうとする高井の温かさがこそばゆくて嬉しくて、高井の声と共にもう一度吸って吐いてを繰り返す。 「んー……っ」 「誉さん、上手。大分入りましたよ。少しずつ慣らしていきましょうね」  高井は俺に唇を重ねると、舌を突っ込み歯を一本一本なぞっていった。歯茎を舐められる度に唾が染み出してくると、高井はそれを美味しそうに吸っては呑み込む。高井の腰は小刻みに揺れつつ、どんどん俺の奥へと侵入していった。  パンパンに広がった皮膚の感覚、そして高井にぴったりと貼りついている内壁の感覚に、ああ、俺は今高井とセックスをしてるんだと改めて実感する。  俺の口腔内を堪能していた高井が、名残惜しそうに唇を離した。ちゅっと鼻の頭に甘ったるいキスをひとつ落とすと、嫣然と微笑む。 「僕の形に馴染んだら、動かしますね?」 「わ、分かった」 「しないように頑張りますけど、嬉しすぎて途中でうなじを噛んじゃったら怒って叩いて下さい」  雄味溢れる眼差しでそんなことを言われて、やっぱり俺はこくこくと頷くことしかできなかった。  にしても、嬉しすぎてうなじを噛む? あれ、アルファがうなじを噛むのって、オメガのヒートの時に番にする為だけじゃなかったっけ?  俺が呑気にそんなことを考えられたのも、この時までだった。  高井が、勝ち誇ったようなギラついた笑みを浮かべる。 「――誉さん、僕の形になりましたね? さあ、誉さんは僕に身を委ねて下さいね……!」 「う、わ、」  あれ、なんかちょっと目がイッちゃってやばくないか高井? と思った瞬間。 「誉さんっ!」 「……――あああああっ!?」  高井の激しい抽送が始まった。

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