愛の歪を美しく描いた獣人オメガバース
土台がしっかりとした王国物ファンタジーをグラウンドに、上質な文体で語られる三人の愛憎劇。番ではない二人の愛という始まりに興味を惹かれ、物語が進むにつれて先が予測不可能になり、迎えた三人の結末で覚えた読感は月明りのように儚く、けれどどこか癒される静かさでした。一途な愛は全て清純と言えるのか、ならば清純とは何か。そして略奪や裏切りなど己の渇望のままに愛を選ぶ姿勢を人は批判できようか。最初から正しく愛せないからこそ見えてくる愛の深さは、時として憎悪の感情と成り果て、理性を奪う。そんな愛の激しさと切なさがとても胸にきました。