『本日のディナーは勇者さんです。』レビュー
(ネタバレというほどの表現があるかは分かりませんが、一応ネタバレ有りということで……!)
今回は、素敵な作品を読ませていただきありがとうございました。
冒頭部分は、正直かなりメタい内容です。コメディでした。楽しくニコニコしながら読み進めました。
攻のアゼルが受(主人公)のシャルにベタ惚れ(冒頭段階では無自覚)オーラ全開なのに、シャルは鈍感無自覚難聴系主人公だから全く気付かず、その何とも言えないやり取りが微笑ましかったです。
話が進むにつれて、当然ながら二人の関係性が変わっていきます。初めはお互いの意見が平行線を辿っていただけなのに、少しずつ交わらせていき、惹かれ合っていくという心理描写を書くのはなかなか難しいと思います。ですが、この作品ではコメディの中にもきっちりと登場人物の心模様を書いていて、シリアスシーンなのに読者の心を暗いままで終わらせなかったり、コメディだからといってペラペラの内容にしなかったりと、作者様の描写テクニック(技量)を余すところなくフル活用しています。長編だと、どこかで飽きやワンパターン展開を読者が感じたりするのですが、そういったものは一切ありませんでした。次のページへ進むボタンを押すのに、何の抵抗もありませんでしたし、とてもメリハリのある素敵な流れでした。
長編だと当然ですが、登場人物が増えます。そして、登場人物が増えるとどうしても一人のキャラに対する印象が薄くなったり、『こんな奴いたっけ?』となります。が、この作品は、そんな事が一切ありませんでした。「〇〇ってキャラが~」という風に話を振られると「あ! あの時△△してたキャラね!」と、すぐに思い出す事が出来ます。キャラ一人一人の個性が強く、印象的なシーンを沢山用意してくださった作者様の技術に「圧巻」の一言でございます。
作者様のあとがきページにありましたように、どうやらこの作品は当初想定していた内容と大幅に違う展開・結末を迎えたそうです。だというのに、そんな事を微塵も読者に感じさせないテンポの良さとまとまりのあるストーリー展開でした。あとがきを読むまで『こうなる想定をして書いていたんだな』と思っていたくらいです。あとがきでどんでん返しがあるとは思ってなかったです。
長くなりましたが……今回は『本日のディナーは勇者さんです。』という素敵な作品を、本当にありがとうございました。