明日、天気になぁれ。のレビュー
(ネタバレといえるほどの表現かは分かりませんが、念のため有とさせていただきます)
木樫先生の持つ文才(シリアス力)を全面に押し出した作品でした。コメディパートはかなり少なめ(ほとんど無し)だというのに、凄く読みやすかったです。個人的には【シリアスパート=頭を使わせる表現】が多い気がします。ですが、こちらの作品はそんなことがありませんでした。ヤゴがヤゴである役割(メタい言い方をすると設定)の説明文は分かりやすく、自分にはストンと落ちてきました。そういう【物語で重要だからしっかりと読者に伝えなくてはいけない部分】を、分かりやすく表現出来るのは木樫先生の技量です。感服でした。
初めからマイナーな部分に着目した内容を書いてしまいました……本文のレビューに参ります。
梅雨というテーマから、かなり捻ったお話です。天気を操る使命を文字通り命懸けでやり遂げなければならないヤゴと、そんなヤゴを助けたい(何かしてあげたい)のに何も出来ない優しすぎる香雲の、ままならなくて悲しいはずの内容なのに、二人の想いが真っ直ぐすぎたからこそ温かい雰囲気になっている、とても読みやすい作品でした。二人が一緒に過ごす日々は、この作品っぽく例えるなら……限りなく地獄に近い天国な気がします。どんなに厳しい現実・現状でも、二人にとっては天国のような世界には変わりないのです。けれど、共に過ごすためには世界(ヤゴと香雲、二人の根本的な違い)があまりにも厳しすぎただけなんです。そこがまた切ない。
ヤゴ視点で描かれている話なのに、香雲の心情が自分(読者)にも伝わってくるというのは、それだけヤゴが香雲の事を愛し、想い、理解していたからだと思います。香雲が林の中で息も絶え絶えになっていたヤゴを見つけられたのも、ヤッパリ香雲がヤゴを愛していたからだと思います。圧倒的な両想いです。これぞ純愛ですね、素敵です。
長くなりましたが、最後に……
本当に素敵な作品をありがとうございました。闇(病み)を感じさせない正統派(?)シリアスは木樫先生の作品では貴重でしたので、大変楽しかったです。とても、一万文字でまとめるには難しいテーマだったと思います。それでもこうして形にしてくれて、公開してくださった事によって、自分は胸が温かくなれる時間を作れました。先を感じさせる、素敵な終わり方だったのも面白かったです。
最大級の感謝を!