素晴らしい作品を拝読できる感動!有り難うございます
本心を告げて嫌われるのが怖い、本当の自分を知られて幻滅されるのが怖い。だから君に釣り合う男になりたい。それは子供と大人にだって、永遠と解決できない悩みだ。歪な愛を抱く彼らの心に刺があるからこそ、互いの欲する型にはまらないと安易に混ざり合えない。
真咲と勇磨、どちらも似た引け目、欲望を抱えている同士でいて、とても不器用だ。
ただ一言、告白をする勇気を振り絞れば、片思い同士の辛い10年の歳月を過ごさなくても良かったのだろうか。不完全な自己を受けいられない彼らは、親友でもいいから、傍観者として愛おしい人を見守りたい。誰よりも互いの幸せを望むが、自分は相手から愛してもらえる器では無い、と一歩を踏み出せずにいる。
劣等感の塊でネガティブ気質な真咲を、幾度ともなく勇磨は窘めます。その健気さ、まさに守護天使。
真咲の自宅に遊びに行けば、彼の母親が出迎えて「おかえりなさい」、と優磨にも微笑みかけてくれる。
「自分を卑下するな。君の周りは愛で溢れているじゃないか」
真咲が気づこうとしない日常は、輝かしいんだよ。自分の殻に籠もる真咲に、優磨は何度も訴えかけます。君は素晴らしい人なんだ。
優磨は己の家庭の事情を打ち明けて、ようやく解放できたのかもしれない。真咲の両目では補正されたフィルター越しでしか、優磨を映していない。彼らの間には一本の境界線があるのかと思えました。
高校二年生の冬、真咲は視姦で情欲を覚えてしまう異常な己に嘆く。そして大学生活最後の冬、優磨も好きな相手に見られながら違う男によって躰を蹂躙される行為に激しく快楽を知る。
そのあと、嫉妬なのか、真咲が自分以外の痕跡を舐め取る執拗さは、倒錯的です。
NTRですね、自己嫌悪に陥った真咲は逃げます。今回は自らの意志で。
見ているこちらがもどかしくなる。真咲、マジでお前はヘタレだ。
冬に交わり、何度も惹かれ合う二人。降り積もる雪が溶けてゆくのに、彼らの想いはいつまでも消えない。思い続ける熱情は凍てつく冬の空気さえ溶かしてしまいそうです。
優磨は一ヶ月遅れの誕生日プレゼントを幼稚園児から大切にしています。破いた似顔絵を貼り合わせて壁に飾り、真咲の母親が編んだ赤いマフラーは唯一手元にある、物に縋る情念にゾクッとしました。何よりもラストは悶絶ものです。優磨の粘り勝ちよっ男前!バーでの旧友が翔平だったのもニクい