長く語る魅せ場と簡潔に語る場面が最も上手い作者さんの物語
丁寧かつ、キャラクターの心情が真摯に伝わってくる、重厚な物語でした。 一話一話に無駄がなく、作品の時間もキャラクターの心もちゃんと変化する。 これは作者さんの技術が光る、素晴らしい作品です。 物語の始まりは幼少期の出会いから。 自分に自信がなく控えめな主人公・真咲くんが幼い頃に出会った真逆の人・優磨くん。 夢かどうか確認するのにつねるのが相手というところに、激しい萌えを感じました。 こういったやりとり等の二人の出会いが丁寧に描かれ、二人に愛着が湧き感情移入できた頃に起こった、真咲くんの一時的な記憶喪失。 この甘さが引き立てられたタイミングで! 約束が果たせなかったまま別れてしまい、切なさが一層に掻き立てられました(感涙) そして舞台は未来へ。再び出会った二人。 真咲くんは優磨くんを想っていましたが、自分に自信の無い彼は、見守ることしかできない。 そんな二人がもう一度距離を重ね仲を深めることで、真咲くんの心情にも変化が生じ、変わりたいという思いで自分を磨く。それは気持ちも同じく、変化していく。 変化した気持ちは、同性に恋をする苦悩と劣情を連れてきました。 痴漢被害をきっかけに、気持ちを伝えるより前に、体を交えたこと。 大好きな〝守護天使〟の面影を優磨くんに見た出会いのせいか、天使のように手の届かない尊いものと眩く思っていた幼い真咲くんが、そんな彼に抱くべきではないと感じていた欲望の葛藤をひしひしと感じます。 2度目の別れから、再会。 16ページの物語で15ページが真咲くん視点だったことで謎めいていた優磨くんの本心。 それが最後にドッと押し寄せてきて、「この魅せ方は服部さんの作品の空気感だからこそ引き立つ、素晴らしい作品だ」と自然に感服致しました! 現代の現実であるリアルと、BLのロマンチックなラブ。 その調和が実に美しい逸品です。 素敵な作品ありがとうございました! 木樫