衝撃でした。
まさに狂愛、押し付けがましいまでの「僕」の執着心……途中まではそんな風に感じながら読み進め、ラストで衝撃。天を仰ぎたくなりました。たった一話、この文字数で「僕」の人生を体験してしまった!そう感じたからです。 傍目には身勝手に見えるほど一途に、「僕」が「お兄さん」へと抱き続けた感情。ただの恋情や愛情と呼ぶにはなんとももったいないこれを、一体何と呼び表すのが正しいのか……まだ分かっていませんし、名付けるのもまた無粋かもしれない。そう思いながらただただ噛み締め思いました――「僕」の事を勘違いしていたなあ、と。それはおそらく「僕」の周りの人たちと同じようにです。「気味の悪い執着」、本当にそうだったろうかと。 とにかく、もう一度読み返しました。今度は「僕」の気持ちに少し寄り添えるかと思ったからです。傲慢かもしれませんが……。 それから二度目に迎えた結末には、思わずじんわり、涙が出ました(一度目はなんだか衝撃的で、それどころではなかったのです)。 「僕」の『僕もここ(宝箱)に入りたい』……伏線でしたね、素晴らしかったです。 もしかしたら人によっては、この結末をバッドエンドだと思ってしまうのかもしれません(それこそ、「僕」の周りの人なんかは)。 けれどもこれを読み終わった私は幸せな気持ちでいました、それだけ「僕」に感情移入してしまった。ゆえに彼の人生を体験してしまった、と感じたわけです。 特段BL好きじゃなくても読んで欲しい作品だと思えます。けれども、あくまでこれはBLじゃなきゃいけなかったとも思います。そうでなかったらきっと、周りの目や、それに付随する2人の関係が育まれる過程など、色々違っていたでしょう。それに、この2人でなくてはならないお話でした。 しかし、これが読めてよかったです。本当に『読者に伝わる心理描写』がお上手で、感情が揺さぶられました。ありがとうございます。