夜が明けるまで嘘を抱くのレビュー
雛菊ニゲラ 様
『3万字までジャンルを問わずレビューをさせていただきます』からきました!
まずは企画へご応募頂きありがとうございます。
そして素敵な作品とその作者様との出会いに感謝致します。
(第3章10までのレビューになります)
全体的に安定して上手い。主人公の智暁の一人称で物語が進んでおり、彼の心情と共に読み手が歩むことで心情を共有していることや、やっていることはクズなんだが一途な面もあり憎みきれない。作品は退廃的な雰囲気が漂いBLというカテゴリーに収まりきらず 、筆者は昭和の退廃が描かれた純文と何度となく重なった。けれど古さはなく現代が描かれている。この作品は中毒性があり読み始めると止まらないのだ。所謂、作者様の手中に落ちたと言ってもいい。さて物語だが、先にも述べたように主人公智暁の心情と共に歩むため、ハラハラドキドキさせられる。ただ退廃的な彼だが、彼1人では退廃にはなれない。つまり彼を受け入れている壱星こそがややもすると狂気を孕んでおり、歪な情愛から退廃にならざる得ないのだ。そして、それは作品の魅力の一つである。おそらく中盤から壱星の歪さが顕著になるのでは? なぜそうなったのかなどが明かされるのではないかと推察する。智暁の片想いの筈の蒼空との関係は良好な進展を迎えるのだろうが、果たして壱星の片想いなのか、両想いなのかの重森との関係はどうなっていくのか。気になるところが多分にある。作品を読んでタイトルにもどると、なんとも『夜が明けるまで嘘を抱く』のタイトルの切ないことか。とにかく魅力的な作品だ。