感涙必至の儚い戦時BL
先日野球のお話に感想を送らせていただいた者です。すっかり果林さんのファンになっています……。 このお話は何度かじっくり拝読しました。 文章の美しさに引き込まれるだけでなく、時代背景、そこに生きるひとりの軍人の想いまでしっかりと胸に伝わってきました。 現代の日本の若者でも、3代4代遡れば先祖はあの戦時を生きていたんですよね。社会情勢もテクノロジーも何もかも違うその時代にも、誰かを愛おしく想う気持ちは今と変わらずにあって。 変わらずにと言っても、国のために命を捧げることが当たり前だったその時勢に、愛おしい人と一度離れれば二度と逢えない覚悟も必要だったその時に、静かに芽生えた恋は儚くもどれだけ燃え上がっただろうと考えます。 『墓場まで持っていく思い』だとしながらもそれを伝えることを選んだ主人公からは、愛おしい彼への未練が少なからず受け取れました。死にゆくことへの抵抗ではなく、どうせ死ぬのなら少しでも悔いのないようにと。 この時代の話で広島・長崎に向かう描写があると、どきりとしてしまいます。どうか生きのびてほしいと願ってしまいます。 彼は最期に懐中時計を握り締め、主人公に助けてと叫びたかったのか、逢いたいと願ったのか。 それはわかりませんが私には、十八歳の彼は最期の瞬間まで生きたかったと願っていた気がしました。恋い慕う主人公がもしかしたら自分のところに帰ってきてくれるんじゃないかと、そんなかすかな希望を持って。国のために死ぬ軍人の主人公と、焼かれ死にゆく自分。きっとあの世で逢える。そんな風に悟ることは十八歳の若者には難しいと考えました。 あまりにも若い命が散ってしまったことに無念さを感じました。でもその後何十年もの間、戦後を生きる主人公を見守り待ち続けていたことに、温かい気持ちになりました。 最初で最後の恋って大好きです。