優しくて切ない
柔らかな語り口が、作者の人となりをそのまま表しているようです。
軽すぎず重すぎずの文体、適度に漢字を開いた表現は、たいていの方が心地良く感じるのではないでしょうか。
激動の時代だった幕末の描写や、さいはての陰間茶屋の様子などをしつこくなく、しかし丁寧に織り込みながら物語は進んでいきます。
中心になるのは主人公・双蘭の恋。
秘めた想いが切ないです。
成就はしなくとも、おそらくは一生ものの恋でしょう。
絶対的なハッピーエンドではないかもしれませんが、僅かな光も見える。
双蘭……双吉の未来は、決して楽じゃないかもしれないけれど、不幸ではないと信じたい。
いつかどこかで、逞しく成長した双吉の姿を見られたらなあと思っております(母恋ちゃんもね)。
優しく、切ない、素敵なお話でした。
読ませていただき、ありがとうございます。