今だからこそ
終戦の時の様々な死を捉えて表す小説。さまざまな話の中でその与えられた死が語られています。それは今までは読書中気持ちが入り込んで悲しんだり考え込むことはありました。が、 ここ数年、特に最近では、あれはお話などではない、まざまざと現実に起こっていたんだという強烈なリアルを感じます。 作者のせいさんもそんな危うい時代の波を感じられたのだろう、実際解説でそう書いておられます。 普通の状態で普通に巡り合ったら起こらなかった事かもしれない、この時代、この時だからこその切なく燃えた恋慕。 そこには同性とか、年の差とかそんな障害はまるっきり関係なく人と人との厚情がありました。深く流れる無情という流れに竿を立てるのはいつも人の心なんだ…… 哀しい話です、でも哀しんでいるだけでは駄目なんだ、常に考えろ見つめろそして忘れるなということを伝える、 本当の時代物小説でした。