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つきあってから☆

 こうして僕と中村さんはめでたく付き合うことになった。  付き合い出してみると、中村さんは恋愛に関してはものすごく照れ屋で、「好き」とか「愛してる」とか自分から口に出していうことはないし、僕の手を握ったり抱きついてきたりすることもない。  けれども僕が中村さんに「好きです」と言ったり抱きしめたりする時は中村さんは決して嫌がったりしないし、照れて少しぶっきらぼうになったりしつつも受け入れてくれる。  それに、他の恋人っぽいことはしてくれない代わりに、セックスは中村さんの方から「するか?」と誘ってくれる。  こう言うと、中村さんは僕の身体だけが目当てみたいに思えるかもしれないけど、中村さんがちゃんと僕に愛情を持ってくれていることは僕自身が日々感じている。  たぶん、中村さんにとっては恋愛感情を表に出すことより、性的な欲求を口にする方が照れないしハードルも低いんだと思う。  考えてみれば、男友達と集まって話す時、性的な話はよくするけど恋愛の話はほとんどしないから、中村さんに限らず男は恋愛事より性的なことの方が口に出しやすい人が多いのかもしれない。  ──────────  最初のセックスは下半身だけ脱いで身体を繋げるだけだったけれど、2回目以降はちゃんと恋人っぽいセックスをしている。  毎回キスもしてるし服も全部脱いでいるし、フェラだってさせてもらった。  中村さんが感じる場所ややり方も色々研究して、今では中村さんの躰の中も外も知り尽くしたと言っていいくらいだ。  ────────────  その日も中村さんの部屋で話しているうちにそういう雰囲気になって、2人でベッドに上がった。 「っ……」  そっと抱き締めて深く口づければ、中村さんはかすかな吐息を漏らす。  セックスの時の中村さんは感じていても喘ぎ声を出すことは少ない。  それでも注意深く観察していれば、こんなふうに吐息や身体の反応でちゃんと感じていることがわかるから、中村さんのそういうささいな反応を見つけられると興奮してしまう。  もっと感じてもらおうと、僕は右手で中村さんのシャツをめくってそっと乳首に触れる。  小さな突起を優しく撫でてからキュッとつまむと、中村さんはピクッと身体を震わせる。  その素直な反応がうれしくて、口づけは続けたままで両方の乳首を念入りに弄る。 「……ちょ、おま、しつこいって」 「あ、すいません。  乳首ばっかりじゃだめですよね。  じゃあ、そろそろこっちも……」  そう言いながら前がふくらんでいるズボンの中に手を入れようとすると、中村さんは「じゃなくって!」と言って僕を押しのけた。 「前から思ってたけど、お前、触り方がしつこいんだよ」 「え、そ、そうですか?」 「ああ。触り方っていうか、はっきり言ってセックスが全体的にねちっこい」 「ねちっこい……」  あんまりな言われようだが、確かにそういう部分はあるかもしれない。 「すみません。  中村さんが僕の手で感じてくれるのがうれしくって、やり過ぎてたかもしれません」  僕がそう言うと、中村さんは少し赤くなって視線を泳がせた。 「と、とにかくだ。  お前に好き勝手触らせるとやり過ぎるから、今日は俺がリードする」 「え……?」  中村さんがリードって、もしかして僕にあんなことやこんなことをしてくれたりして……。 「いいから脱げ」  一瞬にして様々な妄想が頭の中を駆け巡ってフリーズした僕を、中村さんが急かして、自分もさっさと脱ぎ始めたので、僕も慌てて服を脱ぐ。  裸になった僕を、中村さんはベッドに仰向けに寝かせた。 「何だよ、お前だってもうこんなになってるじゃないか」  そう言って中村さんは俺の股間のモノを指先でつつく。  ぶるんと揺れたそれは完勃ちとまではいかないけれど、かなり硬くなっている。  中村さんは僕のそんな状態を面白がるようにニヤニヤしながら、右手で僕のモノを握って擦り始める。  いつもの中村さんはどちらかというと竿を握って単調に擦るだけのことが多いけれど、今日は両手を使って先っぽや袋も刺激してくれたので、僕のモノはあっという間に完勃ちになる。  あ、僕だけ気持ち良くなってる場合じゃなかった。  中村さんにも快くなってもらわないと。  ほとんど反射的にそう考えて、僕はまだ半勃ちの中村さんのモノに手を伸ばす。 「あっ、ちょ、待て橋場、…っ……」  口では待てと言いながらも躰はしっかりと反応していることに気を良くして、空いている手で乳首も、と思って体を起こしかけると、中村さんに「こらっ」と押し返された。 「俺がリードするって言ってるだろ。  お前は触んなって」 「あ……。そうでした……」  確かにそう言われていたし、僕自身中村さんのリードを楽しみにしていたのに、普段から中村さんの快感を優先するセックスばかりしているので、無意識のうちにいつもと同じ行動をとってしまったようだ。  習慣とは恐ろしい。 「何だよ、俺の言うこと無視してなしくずしに自分のペースに持っていくつもりかと思ったら、素でやってたのかよ。  あー、まあ、お前はそういうやつだよな」 「すいません……。気を付けます」 「おう、そうしてくれ。  ……って言っても、お前、夢中になってきたらまた無意識にやりそうだよな。  あー……そうだな、物理的に手出しできなくしてしまえばいいか」  そう言うと中村さんはベッドから降りて、タオルを持ってきた。 「橋場、両手揃えて前に出せ。  縛るから」 「えっ、し、縛るんですか?」 「そうでもしないと、お前、また無意識に俺に触るだろう」 「うっ、確かに」  中村さんの言う通り、いくら自分で気を付けていても、中村さんにリードされて気持ち良くなったら、理性が飛んで中村さんを感じさせようと自然と体が動いてしまう気がする。 「わかりました。お願いします」  納得した僕が腹の上で両手首を揃えると、中村さんはその手をタオルで縛った。 「縛り方、ゆるくないですか?」 「ゆるくていいんだよ。  お前、両手が自由になってるからつい触ってしまうだけで、縛り方がゆるいからって無理に解いてまで触ろうとはしないだろ」 「あ、それは確かに」  中村さんの説明に納得しつつも、そうやって中村さんが僕のことを信頼……いや、ゆるくても縛られている以上、信頼されているとは言いにくいけど、それでもそういう面も含めて僕のことをわかってくれているというのが嬉しい。

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