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にゃんにゃんがニャンニャンしようと泣いてます
※視点切替え有り→◇受け視点◆攻め視点
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◇
僕の名前は玉城鈴 。友達はみんな僕のことをたまって呼ぶ。まるでどっかの飼い猫みたい。やだなぁ。
でも大好きなゆーちゃんから、あの腰に響く低い声で「たま」って呼ばれるのは大好き。体の奥がきゅう~って熱くなるの。
ゆーちゃんはあんまり喋らないから、声が聞けるのは僕の名前を呼ぶときくらい。素敵な声が聞けないのはちょっと寂しいけども、顔を見たらゆーちゃんの言いたいことは大体わかるから困らない。
…うん。それは困らないけど、別のちょっと困ったことがあるんだよね。
あのね。ゆーちゃんの声を聞くとね。きゅう~ってなるだけじゃなくて、なんだかね。あそこがじんじんして来ちゃうの。
ゆーちゃんの男らしいあの腕で、ぎゅうっ!って抱き締めて欲しいな。そしてそして、キッ、キスもして欲しい。さらにさらに、えっちだってしたい!したいんだよぅーっ。
……付き合って3ヶ月経つのに何にもないのって…、おかしいよね?僕がこんなキューピーなお子さま体型だから、ゆーちゃんはソノ気にならないのかなぁ…。
好きな人とは、キスしたり、えっちしたり、いっぱいいっぱい触れ合いたいよね?僕、おかしくないよね?
もしかしたら、キューピーな僕に手を出すのは、まだ早いとか可哀そうとか優しいゆーちゃんのことだから、思っているのかも。だから!僕はゆーちゃんを誘惑することにしましたっ!!
今日、2月22日はにゃんにゃんにゃんで、にゃんこの日なんだよ!
にゃんこの日はね。必殺アイテムを着けたら恋人を誘惑してもいい日なんだって!
寮で同室の佐野くんが教えてくれたの。佐野くんは、僕の知らないことを沢山知ってるんだよね。
クラスメートの田中くんが、佐野くんは腐男子だから気をつけろって言ってたけど、腐男子ってなにかなぁ?
…あ、それでね。佐野くんが必殺アイテムを貸してくれたんだよ。
じゃじゃ~っん!『これを着けたら貴方もにゃんこに大変身☆恋人もイチコロにゃん!』
そんなキャッチコピーが書いてあるパッケージを開けると中から、にゃんこの耳が着いたカチューシャが出てきた。うっわぁ!スッゴい良く出来てる。にゃんこさんのお耳とおんなじフワフワの触りごこちだぁ。お耳は僕の髪とおんなじ亜麻色をしている。
ようっし!さっそくお耳を装着だ!
あとはお洋服を脱いで、ゆーちゃんのお部屋(ゆーちゃんは一年生なのに生徒会の書記をしてるから一人部屋なの。スゴイでしょ~)のベットで、ゆーちゃんの帰りを待つだけだにゃん☆
今の僕はにゃんこなんだから、ちゃんとにゃんこらしく喋らなきゃ…にゃ!佐野くんの指導どおりにやれば、ゆーちゃんは必ずえっちしてくれるハズ。
にゃふふー。早くゆーちゃん帰ってこないかなぁ。
◆
俺、都並雄馬 には悩みがある。その悩みとは俺の大事な可愛い恋人のことだ。
俺の恋人はちっこい。同い年とは思えないちっこさだ。だが極端に口数の少ない俺の不器用さに不満も持たず、俺のことを先回りして考えてくれる優しい恋人だ。
そんな可愛い可愛いたまと付き合い始めて3ヶ月。
俺の悩みは恋人のたまとHはおろかキスさえ出来ていないという事だ。
別にナニが役立たずなわけではない。ナニは至って元気だ。元気過ぎる程にな!
そう、俺の悩みはまさしくそのナニについてなのだった。
亜麻色の髪とくりくりの大きな目が、あどけない子猫を思わせる小さなたま。そんな幼気 なたまに手を出すのに、犯罪めいたものを感じるのは事実。
だがプラトニックな関係が続いているのは、それがストッパーになっているからじゃない。
しかしこんな悩みをたまに打ち明けたら怖がって逃げてしまうかも知れない。たまが怖がって俺の元から去ってしまいでもしたら…、そんな事考えたくもない!
やはりもう少したまが大人になるまでは、我慢をしようと心に決めた。
だと言うのにのにそんな俺の気持ちも知らずに、待ち受けていたのはとんでもない姿の恋人だった…。
俺の部屋で帰りを待っていてくれた可愛いたま。その頭には猫耳が付いていて、たまの動きに合わせてピコピコ揺れている。
そしてたまはベットの上に素っ裸で座っていた。
一体何が起こっているんだ…!?これは俺の欲望が見せる幻覚なのか!?
たまが鈴を転がしたような声で「にゃあん」と鳴いた。
いつも動きの悪い俺の表情筋は完全にフリーズしてしまっている。
◇
あれ…。おかしいな。佐野くんの指導では、にゃんにゃん鳴けばゆーちゃんがすぐえっちしてくれるって言ってたのに、ゆーちゃんは立ったまま一歩も動こうとしない。
にゃあにゃあ鳴く僕の声だけが虚しく部屋に響いてる。
……やっぱり僕じゃ駄目なんだ。
ゆーちゃんにとって僕はただの拾った子猫…。
恋人だと思っていたのは僕だけだったんだ。
大好きなゆーちゃんを困らせちゃった。
誘惑に失敗した悲しさと、ゆーちゃんに迷惑を掛けた情けなさで涙が溢れて来る。僕は猫耳を外してゆーちゃんに謝った。
◆
たまが泣いている。
さっきまでは可愛い声でにゃあにゃあ鳴いていたのに、今は大きな瞳からポロポロと涙をこぼして泣き出してしまった。
「たま…?!」
驚いてたまを呼ぶとたまは消えてしまいそうな声で、ごめんなさいと言った。どうしてたまが謝るんだ?
「ゆーちゃんの恋人だって思ってたのは僕の方だけだったんだね」
…は?たまは何を言っているんだ?
「ゆーちゃんにえっちして欲しくって勇気を出したけど、ゆーちゃんには迷惑だったんだね。ごめんね?」
……いま、たまは何と言った?俺にHをして欲しいと言わなかったか?
いやいやいやいや!そんなはずはない!たまがそんな事を言うはずがない!俺の欲求不満が見せている幻影と幻聴なんだ。
パニックになった俺は、泣き続ける目の前のたまに声を掛ける事もせずに、ただ立ち尽くしていた。
◇
僕の言葉にゆーちゃんは何も言わずに、ただ黙って立っている。
そんなゆーちゃんの姿に僕の目からはまた涙が溢れてきた。こんなに泣いたらまたゆーちゃんを困らせちゃう。
なんとか泣き止もうとするけれど、大好きなゆーちゃんに嫌われた悲しさで涙は全然止まってくれない。
これ以上ゆーちゃんに嫌われたくないよう…。
僕は涙を隠すためにベットに潜り込んだ。そうして毛布にくるまって泣いてたら、しばらくして僕の傍で優しい気配がした。
…ゆーちゃん?
毛布に潜り込んだ僕の体をゆーちゃんが抱きしめている。それから温かくて大きな腕が僕に語りかけてきた。
「たま…。どうして泣いているんだ?」
ゆーちゃんの声が毛布越しに聞こえる。
「たまは俺の大事な大事な恋人だ。だから顔を見せて?ちゃんと話をしよう」
僕の大好きなゆーちゃんの優しい声がそう囁いてくる。
…僕はゆっくりと毛布から顔を出した。
◆
ようやく動き出した頭を振り今の状況を整理する。
たまは確かに俺にHをしようと言った。
それから自分だけが恋人同士だと思っていたと言った。
そして今は毛布を被って泣いている。
そうだ、たまが泣いているんだ。
俺の大事な可愛いたまが泣いているじゃないか。
何をしているんだ俺は!ちゃんとたまの話を聞かなければ。俺は泣き続けるたまを毛布の上から抱きしめて問いかけた。
ゆっくりと毛布から出てきたたまの可愛い顔は涙でぐちゃぐちゃだった。それが俺のせいだと思うと胸が痛い。
「ゆーちゃん…」
たまは嗚咽を堪えながら擦れた声で俺の名を呼んだ。
「…僕、ゆーちゃんの…こいびと?」
「ああ勿論だ。たまは俺の大切な愛する人だ」
「ふ…、ふぇぇぇん!ゆーちゃぁん~」
俺の胸に縋りついて泣き出したたま。
「…じゃあどうして?どうしてゆーちゃんは僕になんにもしてくれないの!?」
「たま…」
「ぼっ僕は、ゆーちゃんにこんな風にぎゅってして欲しいし、キッスだってしたいし、え、えっちだってしたいんだよ?」
たまは泣きながら堰を切ったように俺に訴えてくる。
「なのにっ、なのにどうしてゆーちゃんは何にもしてくれないの!?僕がこんなに子供っぽくて色気がないから?恋人なのにキスもえっちもしないなんて、ゆーちゃんは僕のことが好きじゃないんでしょ?」
たまの言葉を聞いて、俺は自分がとんでもない過ちを犯していた事にやっと気が付いた。
俺はたまに嫌われたくないと、たまの事を気遣ってる振りをして逃げていたんだ。それが大事なたまをこんなに悲しませる事になった。
「…ごめんな。たま」
怖がって逃げてる場合じゃない。ちゃんと話して、たまに分かって貰わなければ。
「どうして謝るの…?やっぱりこんなワガママな僕は嫌いになっちゃった…?」
また、たまの声が涙に濡れる。しっかりしろ俺!
「たまは俺に何をして欲しい?たまの思っている事を全部教えてくれ」
俺はたまに甘えていた。何も言わないでもたまなら、俺の事をわかってくれてるからとそれに胡坐をかいていた。
大事な恋人を悲しませていた事にも気付かないでいたくせに。
「…たまって、ゆーちゃんに呼ばれるの好き。でもね恋人ならちゃんと名前で呼んでほしいの」
嗚咽まじりにたまが少しずつ話しだす。
「それに、こっ…恋人ならこうやってぎゅうってして欲しいし、キスも…えっちも…したいの。ゆーちゃんにして欲しいんだよぅ…」
俺の胸に顔を埋めたまま、たまは小さな声で続ける。
「…ああ、わかった。ごめんな。鈴…」
◇
ゆーちゃんが、ゆーちゃんが僕をすずって呼んでくれた。
「これからはいつだって抱きしめる。どこでだって鈴に好きだって言う」
ゆーちゃんがいっぱい喋ってくれてる。
ゆーちゃんの口からは、僕がずっと言って欲しかった言葉がいっぱい紡がれていった。
嬉しい。嬉しい。嬉しい。僕はちゃんとゆーちゃんの恋人なんだ。
…じゃあ、僕はゆーちゃんを誘惑してもいいんだよ…ね?
「…じゃあ、えっちもシテくれる?」
外した猫耳をもう一度着けて、僕はゆーちゃんにオネダリした。
◆
小首をかしげて涙で濡れた大きな瞳で見上げてくるたま。
そのあまりに強烈なおねだりに俺の理性アッサリとは吹き飛んだ。
「鈴っ!好きだあーっっ!」
「…にっ、にゃっああぁーーっ!!」
―――そして部屋にはたまの絶叫がこだました。
◇
にゃふふー♪あれから僕はゆーちゃんにいっぱいいっぱいキスして貰って、それからえっちなことも(キャッ♡)してもらえた。
佐野くんににゃんこカチューシャを返しにいったら、それはあげるからゆーちゃんとどうだったのか教えてと言われた。
恥ずかしかったけど、佐野くんの指導のおかげでゆーちゃんとホントの恋人同士になれたんだから、ちゃんと話したんだ。
ーーーそうしたら僕たちはまだ最後までえっちしてないことが判明した。
がーん∑( ̄□ ̄;)!!
◆
あれから理性を飛ばした俺はたまに襲い掛かった。キスをして至るところを愛撫してトロトロに溶かしたたまを美味しく頂こうとしたのだが…。
やはりたまと一つになる事は出来なかったのだ。
その原因は俺の悩みの種であるソレなナニだ。
俺のナニは人並み以上にデカくて立派過ぎるのだ。俺の馬並なナニをちっこいたまに準備もなしに受け入れさせる事は無理だった。
だから少しずつたまを慣らして俺のナニを受け入れて貰えるように、そっと二人で愛を育んでいくつもりだったのに…。
一体どこから漏れたのか、俺のナニが立派過ぎるが故に、たまと最後までやれてない事が学園中に知れ渡り、俺とたまは妙な応援を受けている。
そしてたまはたまで最後までHをしようと意欲満々なのだ。
この間は猫耳カチューシャと一緒にアダルトな猫シッポまで用意して迫ってきた。
今日もたまは可愛くにゃんにゃんと鳴きながら俺を誘惑してくる。そんなたまの誘惑に負けて暴走してしまわないように俺は自分と戦う毎日。
そして俺に『馬並な都並』と言う通り名が付いている事を知ったのは、無事たまと結ばれた後だったーーー。
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玉城鈴…亜麻色のふわふわ子猫。入学式で迷子になっていたところを雄馬に拾われて一目惚れ。付き合って随分経つのに全然えっちな事をしてくれない雄馬に誘惑大作戦を決行。
都並雄馬…武術に長けた侍な男前。仔猫のようなたまを溺愛しているが、無表情、強面、無口の三重苦な為まるで伝わっていない。馬並みな自分のナニで、小さいたまを壊してしまうかも知れないと、怖くて手が出せないでいた。
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タイトルから思い付いて「馬並みな都並」のフレーズで落としたかっただけのお話。お馬鹿な話なので短くてテンポの良い話にしたかったのですが、…玉砕しました…(⁎˃ᆺ˂)
舞台は王道学園。ふわふわ亜麻色子猫と無口な男前カップル。雄馬は生徒会の一年生書記で一人部屋なので、たまは殆んど雄馬の部屋で過ごしています。そんな恋人同士がえっちをするには最高の環境にも関わらず、手を出してこない雄馬に不安になったたまが腐男子の佐野に相談をして…みたいな流れです。
腐男子佐野くんをブレーンに持つたまは、これからもグイグイ雄馬に迫り佐野くんの欲求を満たしてくれる事でしょう。自分の欲望の為なら協力を惜しまない佐野くんの存在に、雄馬が気付くのは何時になるのやら(笑)
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