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ぼくらの日常
「ねえ、くまくん。今日も大好きだよ。」
「…うん、ありがとう」
毎朝、僕達は僕の家の前で待ち合わせをする。
その時、おはよう、の前に必ずうさくんは僕に「大好き」というのだ。
何時からそうなったのか、考えたこともあったけれど思えば小さい時、僕らが幼稚園の時からうさくんは僕の事を「大好き」だと言っていた。
…ので、余り気にしないようになった。
流石に高校生にもなって言われ続けるのは気が引けるし、もう辞めないか。と切り出した時のうさくんの顔が多分、初対面の人にはたいてい怖がられる僕の顔よりも怖かった。
思わずひっ、と引きつった声を出せばうさくんはちょっと拗ねたみたく「今までずっと言い続けてたから、急に辞めるのはむずかしいなぁ。くまくんは?僕に好きって言われるの、嫌?」小首を傾げて、身長差のせいで上目遣いをしてくきたのだ。
ぼくは昔からこの仕草によわい。だって、目もクリクリで髪の毛も粟栗色のふわふわ天然パーマで、ちいさくて、女の子みたいに可愛いから。
「いや、じゃ…ない……けど。なんて返せばいいのか分からないよ」
「へへ、クマくんはありがとうって何時もみたく返してくれればいーよ。僕が勝手に君を好きなだけだからね。」
「…うん、」
「好きって言われるの、嫌じゃないなら。いいんだぁ」
「嫌じゃないよ、…ありがとう」
僕のゴツゴツした指先を、うさくんのふにふにした指先が絡めとる。
これも、小さな時からずっと。
一緒に帰る時は手を繋いで、とろくさい僕をうさくんが引っ張ってあるく。
僕より全然小さいのに、この時ばかりは大きくみえるうさくんの背中が、ぼくは――。
「くまくん。」
「ぅえ!?」
「何その驚き方。かわいい。」
「えぇ…」
「…明日も、大好きだよ」
「………うん」
突然僕の方を振り返ったうさくんは、僕の返事をきくと満足そうに笑って、僕の手を急に離して走り出す。
「よーし!くまくんの家まで競走だー!兎の脚をなめるなー!」
「え、ええっ、ずる!ずるいよ!!!!うさくん!!!!!」
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