1 / 1

ぼくらの日常

「ねえ、くまくん。今日も大好きだよ。」 「…うん、ありがとう」 毎朝、僕達は僕の家の前で待ち合わせをする。 その時、おはよう、の前に必ずうさくんは僕に「大好き」というのだ。 何時からそうなったのか、考えたこともあったけれど思えば小さい時、僕らが幼稚園の時からうさくんは僕の事を「大好き」だと言っていた。 …ので、余り気にしないようになった。 流石に高校生にもなって言われ続けるのは気が引けるし、もう辞めないか。と切り出した時のうさくんの顔が多分、初対面の人にはたいてい怖がられる僕の顔よりも怖かった。 思わずひっ、と引きつった声を出せばうさくんはちょっと拗ねたみたく「今までずっと言い続けてたから、急に辞めるのはむずかしいなぁ。くまくんは?僕に好きって言われるの、嫌?」小首を傾げて、身長差のせいで上目遣いをしてくきたのだ。 ぼくは昔からこの仕草によわい。だって、目もクリクリで髪の毛も粟栗色のふわふわ天然パーマで、ちいさくて、女の子みたいに可愛いから。 「いや、じゃ…ない……けど。なんて返せばいいのか分からないよ」 「へへ、クマくんはありがとうって何時もみたく返してくれればいーよ。僕が勝手に君を好きなだけだからね。」 「…うん、」 「好きって言われるの、嫌じゃないなら。いいんだぁ」 「嫌じゃないよ、…ありがとう」 僕のゴツゴツした指先を、うさくんのふにふにした指先が絡めとる。 これも、小さな時からずっと。 一緒に帰る時は手を繋いで、とろくさい僕をうさくんが引っ張ってあるく。 僕より全然小さいのに、この時ばかりは大きくみえるうさくんの背中が、ぼくは――。 「くまくん。」 「ぅえ!?」 「何その驚き方。かわいい。」 「えぇ…」 「…明日も、大好きだよ」 「………うん」 突然僕の方を振り返ったうさくんは、僕の返事をきくと満足そうに笑って、僕の手を急に離して走り出す。 「よーし!くまくんの家まで競走だー!兎の脚をなめるなー!」 「え、ええっ、ずる!ずるいよ!!!!うさくん!!!!!」

ともだちにシェアしよう!