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第15話
立ち昇る蒸気。暖かいシャワーが俺の頭に降り注ぐ。
放心状態の中、やっとの思いで帰路に着いた俺は、すぐさま浴室に向かった。
汗と体液の付着した身体はあまりにも不快で、居ても立っても居られなかった。
小杉山の匂いが、身体に染み付いてしまっていないか無性に不安になる。
痛いくらいに全身の皮膚を擦り、身を清めていた。
それでも、眼を瞑ればまたあの情景が浮かんでくる。
『小杉山っ……イ、く…も、だめ……!』
『…吐き出せよ……俺もお前の中に注ぎ込んでやるから』
『うぁッ…ひゃっァ、ぁああ─…っ!!」
「っ……!」
耳が、身体が、全てを鮮明に記憶している。
小杉山の猛々しいモノが俺の中を何度も何度も陵辱し、深く貫いていった。
忘れたくても忘れられない。
俺は自分の尻に手をやると、恐る恐る後孔に指を当てがった。
今はしっかりと閉ざされているそこは、触れるだけでも微かに腫れていることがわかる。
ふやけた指先で縁をなぞり、負傷していないことを確認すると安堵した。
改めてこんなにも狭い場所で小杉山のモノを受け入れていたなんて、信じられなかった。
それだけでなく、小杉山の精液も注がれて…。
「ふぅ……んっ」
ゆっくり息を吐きながら、指を進める。
たった一本の指を入れるだけで、こんなにも苦しい。
浅く呼吸を繰り返し、強張りが解けるのを待った。そして中で指をぐるりと回す。
「んんっ!」
内壁がまだ敏感になっていたために、声を抑えることができなかった。
それでも一刻も早く中に出された異物を掻き出すためには続けるしかない。
くちゅくちゅと中を探る。徐々に慣れてきたのか、入り口も柔らかくなり動きやすくなった。
『そんなに指に吸い付いて、もっと欲しいのか』
「ち、ちがっ……」
脳内に響く声に否定する。
これはただの処理なのだから、深い意味はない。感じているはずもない。
否定しながらもヒクつく孔に、もう一本の指を当てがっていた。
違う、こんなはずじゃない。こんなこと本当はしたくない。
『我慢するなよ…欲しければくれてやるよ』
「あぁっ……!」
幻聴だ。
幻聴に促されるままに、指を増やした。
窮屈なソコはまるで喜んでいるかのように蠢いていた。
ばらばらに指を動かすと、中から小杉山の体液が指を伝って流れ出る。
卑猥な音が浴室中に広がって、止まらない。
下半身に目をやると、俺自身はすっかり熱を帯びて硬くそそり立っていた。
「はぁ……っ」
空いた手で先端に触れる。
少し触れただけなのに、そこは嬉し涙を零していた。
ぬるぬると先端を滑らせ、そのまま自身を掌で包んだ。
「あっ…あ……っ」
ゆっくりと、そして徐々に早くなる手の動き。
すっかり頭が馬鹿になったようで、もう快楽を求めるだけの動物に成り下がっていた。
一度始めると止まらない。
もっと、もっと、強い快感を。
止めどない愉悦を。
「ん、んっ……」
刺激から与えられる快楽と、自分を慰める嫌悪感から涙が溢れてきた。
こんな快楽に逆らえないなんて、高校のときと変わらない。
あの頃と同じ過ちをしてはいけない。そう思うのに、身体がまだ覚えている。
悦んでいる。
「ふっ…ん……」
指の動きや扱く手が忙しない。
痺れるような快感が下腹部から脳髄へと電流のように流れていた。
でも、まだ足りない。
一度思い出してしまったら、元には戻れない。
「あ、っ…小杉山ぁ……」
媚びた甘い声が漏れた。
その名を口にした瞬間、頭が真っ白になるほどの快感が突き抜けていった。
同時に白濁が弧を描きながら吐き出されていく。
「はぁ…はぁ……」
排水溝に飲み込まれていく精液を見つめながら、俺は力無くその場に座り込んだ。
また、繰り返してしまうのだろうか。
興奮が冷めてしまえば、残るのは罪悪感だけだった。
力無く脱衣所に向かう。
その携帯の着信を知らせるバイブが鳴り、暫くすると切れた。
携帯に何件も表示されている着信履歴は全て彼女からだ。
でも、電話をかけることができない。
こんな状態で話せるわけがない。合わせる顔もない。
俺は、長く現実から目を背けていただけで、根本はあの頃から何一つ変わっていないのだということを思い知らされた。
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