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第3話
それは夏休み明けの新学期。
全校集会で、退屈な校長先生の有難いお話を聞いている最中。
俺の後ろに並ぶ同じクラスの生徒の会話を聞いてしまったのだ。
「あー、ダリィー」
「声でけーよ」
注意された方は一段と声のトーンを落としてヒソヒソ話を始める。
「あ、そういやさ、Ⅾ組の重村 って知ってる?あの背高ぇやつ」
重村と聞いてドキッとした。
瞬くんの名前だ。
俺はそいつらと一緒に、Ⅾ組が並んでいる列に視線を送る。
瞬くんは言うように他の奴よりも背が高いから見つけやすい。彼は真っ直ぐに前を見据えていた。
「あー、あのいかにもリア充って感じのカッケー奴やろ? 知ってる知ってる」
うんうん、瞬くんは噂されるくらいカッコええよね、やっぱり……なーんて自分の事を褒められているみたいに喜びに浸っていると。
「俺さぁ、夏休み中すげーもん見たんやけど!」
「え?すげーもんって?」
「俺、夜バイト終わって帰ってたらさ、その重村とA組の奴が仲良さそうに歩いてて、2人で公園に入ってったからなんとなく気になって後つけてみたんやけど……なんと茂みに隠れてキスしてたんよ!」
……は?
「うぇ〜マジかよ〜。えげつねーな」
「しかもベロチューだぜ? まぁ、重村は格好ええからそんなに不快な感じはせーへんかったけど」
「えっ、何お前、もしかしてこっち?」
「ちげぇよバーカっ!」
「それっ、ホンマに?!」
俺はいてもたってもいられず、後ろを振り向きその友人に詳細を聞いた。
どうやらその友人の言う事は、嘘ではないらしい。
あれは間違いなく、瞬くんだったと。
何故俺がそこまで躍起になって聞いてくるのか不思議がっていた(親友だけにしか瞬くんと付き合ってる事、話してないから)。
頭が真っ白になって何も考えられなかった。
瞬くんがまさかそんな事をするなんて、寝耳に水で。
もちろん此処は男子校だから、もし友人が言っている事が本当だったら、相手も男って訳だ。
俺は早速その日の放課後、1人で帰ろうとしていた瞬くんを慌てて呼び止めて、体育館裏に呼び出した。
もちろん、そんな事は絶対にあるわけが無いという自信を持って。
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