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第15話
「まぁ立ち話もなんですから、も一回乾杯といきましょうか!」
翔平はそう言って何人かを席に座らせた後、景の耳元に唇を寄せて、俺の方を親指で指差した。
なんとなく、俺の事を言ってくれてるんだろうと分かった。
次の瞬間、ニコリと微笑む景と目が合った。
心臓が止まったかと思った。
その日本人離れしたような、綺麗すぎる顔立ち。その大きな瞳が、俺を見て細まった。
あんな優しい顔するんだ……と意外だった。テレビドラマでは、あまり笑わない、クールな役が多かった気がするけど。
その真っ直ぐな眼差しに耐えられず、俺は唇をぎゅっと一文字に結ぶと、恥ずかしさのあまりすぐに視線を逸らしてしまった。
翔平に促されて、景は俺の目の前の席に座った。
何か話すかと思ったけれど、俺の隣に座る翔平の方を向いて、飲み物はどれにしようかとか、どれが美味しいのかなどメニュー表を開きながら訊いていた。
景の長い指がメニュー表の上を行き来するたびに、緊張した。
(動いとるっ!目の前で、藤澤 景が動いとるっ!)
景が頼むのかと思いきや、翔平が店員を呼んで、景が翔平に伝えて、それを翔平が頼むという二度手間をしていた。
翔平、いつもこれやってるのかな。そう思うとフッと笑いそうになった。
一通り頼み終えると、翔平がいきなり俺の肩を叩いた。
「で!こいつが修介!宜しくなっ!」
なんだかふざけた言い方で翔平に紹介されてしまったな、と思ったけれど、景はこちらを向いて笑った。
「……翔平から聞いてるよ。すごく、気の合ういい友達がいるんだって」
景の声は、落ち着いた穏やかな低い声だった。
なんだか凄く心地よい。
話しかけてくれた事か、それとも翔平が俺の事をいい友達と言ってくれていた事か、どちらの方か分からないけどやっぱり恥ずかしくなって、自分でも顔がどんどん赤くなっていくのが分かった。
「あ、いえ……」
また少し頭を下げて、目を合わせられないでいると。
「こいつ、いつも変な友達連れてくるけど、最近まともになってくれたみたいで良かったよ。馬鹿の相手するのは大変だけど、これからもこいつと仲良くしてやって?」
景にそう言われて、顔を上げて何かを言おうかと思ったけど、それよりも先に翔平が口を出した。
「ちょっと、ひどくない?俺がいつまともじゃなかったわけ? そんな事言ってると、朝まで飲ませちゃうからね!」
「いいよ別に。明日休みだし」
「……いや、やめとこう!俺が先に潰れる!」
頼んでいた飲み物が来ると、翔平は立ち上がり、乾杯の音頭を取った。
「じゃあみなさん、景さんも来た事ですし、改めまして、カンパーイ!!」
俺は何度目かの乾杯で、初めて景とグラスを合わせた。
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