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第27話

《今回は凄い方に来て頂いてますよ〜! 今年上半期ブレイクランキング一位にも輝きました、いま最もキテる俳優、藤澤 景さんでーーすっ!》 部屋でご飯を食べながらテレビを観ていたら、急に景がアップで映し出された。 あ、景や。 《宜しくお願いします》 景は黒髪を無造作に散らして、なんの変哲も無い無地のパイル地のビックサイズの黒のパーカー、ジーパン、ハイカットスニーカーというよくあるカジュアルな装いで、イケてない奴が着ると途端にダサくなるような格好で現れた。 俺がこんなん着たら田舎モンのオタクみたいになるんに、さすが景。何でも着こなせるんやな。 やたらとテンションが高いMCの女子アナウンサーが、右手で拳を作り大きく宙に掲げた。 《そ、れ、で、は〜!!早速藤澤さんにクエッション!! イエ〜イ!!》 《……ィェーィ……》 ぷっ!! 俺はご飯粒を吐き出しそうになった。 景はその女子アナのテンション虚しく、恥ずかしそうに控えめに言って、なんとなく胸のあたりで拳を振った。 可愛すぎやろ。景の風貌とはまるで合わないその動き。 《では、最近嬉しかった事は〜?》 景は、そうですね……と少し考えてから顔を上げた。 《修介と、出会えた事ですかね。まだ出会ったばかりでお互いの事を何も知らないんですけど、これからもっと知りたいと思ってます。こんな気持ちになったの、生まれて初めてです》 は?景、何言っちゃってんの? これ、全国放送だよ?俺の名前出してどうゆうつもりやねん。 《えーっ!!じゃあそれは、こ、い!って事で宜しいでしょうか?!》 女子アナは嬉しそうに景に訊いた。 《はい。そうですね。修介が好きです》 えぇ〜?どうしたんよ、景! 景のアップになると、画面越しに俺と目が合った。 《僕、修介の事好きだな。修介がもし女の子だったら、僕の彼女にしてたかも》 * * * PPP……という電子音で目が覚めた。 ゆっくり瞼をパチパチさせたら、今の鮮明な映像が夢だったんだとようやく気付き、ガバッと上半身を起こした。 「俺っ……なんちゅー夢見てんねん……」 景と二人で食事をしてから一週間。あのセリフが嬉しくて忘れられなくて、夢に景が出てくる事が多くなった。でも、ここまでアホな夢を見たのは初めてだ。 「はっ!今日の一限、早よ行かんといけないんやった!」 水曜の一限の先生は、授業の開始時間にその場にいない生徒はバッサリと切り捨て、一秒でも遅刻したら教室に入れてもらえない事になっている。 いつもより早めに起きなければいけないのに、昨日忘れていて、ついいつもの時間に目覚ましをセットしてしまった。 「あー!遅刻するーっ!」 遅刻したら、景のせいにしたい。 あの日、景が笑いながらあんな事を言わなければ、俺はこんなに景の事を考えずに済んだのに。 無料動画サイトで景の事をどんどんチェックするようになってしまったし、そのお陰で夜寝不足だ。 俺は大急ぎで支度をして、大学へ向かった。

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