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第429話

一応身体も洗いっこした後、気泡が出る湯船に浸かった。 一応、というのは、景が俺の足の間を必要以上に洗ってきたからだ。 こんなところで始めてしまっては逆上せてしまう。 しつこく付きまとってくる手をするりと交わして、なんとか逃げ切ったのだ。 膝の頭に顎をちょこんとのせた俺は、向かいに浸かる景をじっと見つめる。 さっきは、一緒に住むことになったら景といつでも風呂に入れるんだって嬉しくなったけど、それってつまり、いつでもエロい事ができてしまうという訳だ。 この変態の事だから、きっと毎日でも俺の体を求めてきそうな気がする。 それはそれで愛されてるって証拠だから嬉しいんだけど、俺の体は悲鳴を上げないだろうか。 とある一室で二十代男性が死亡……死因は精液の出しすぎ…… そんな見出しのニュースが流れたらどうしようと本気で思っていたら、何かを感じ取ったのか、景は話しかけてきた。 「修介。今後の事なんだけど」 「えっ、エッチの事?」 「え?いや、一緒に住む話。僕と全部、きっちり折半でいいよね?あと僕らの関係性。周りには同居人っていう事にしておこう。トラブルが起こってからだと遅いし」 うんうん、と何度か頷く。 朝井さんも言ってたけど、事務所もいろいろとうるさいのだという。 俺達の関係がバレて、景が仕事を出来なくなってしまうのが一番嫌だし、みんなに俺たちの事を祝福してほしいわけじゃない。 景といられるんだったら、隠しておくなんて事どうって事無い。 「でも、景、ホンマにええんか?あんないい部屋やめて、俺のために引っ越すだなんて」 「別にいいよ。あの部屋は快適だったけど、いつもどこかガランとしていて寂しいなって感じてたんだ。君が隣にいないから。だったら一緒にいられる方法はないかなって、ずっと考えてたんだ」 「景……」 精液の出しすぎで死ぬのは嫌だけど、なるべく景の誘いには乗ってあげようと決心する。 感動で胸がいっぱいになって、思わず瞳をキラキラさせてしまう。 なんで景はこんなにも優しいのだろう。 「だから、君のご両親にもちゃんと言っておこうと思って。さっき言われたように、ちゃんと友達だっていう事にしておくから。今度、都合のいい日を聞いておいてくれるかな?」 「わ、分かった。なんや、今から緊張してまうなぁ」 「修介の親にも僕からうまく言おうか?君だと、ふとした拍子にポロっと口を滑らせちゃいそうだしね」 「ぐ……何も反論はありません」 視線を逸らしていると、不敵に微笑む景に「こっちにおいで」と言われたから、湯船の中を移動して、景の太ももの上に座って背後から抱き締められる体勢になった。

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