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第446話 side景

僕は膝の上で拳を作り、一度深呼吸をした。 修介には申し訳無いが、ここは僕の直感で動く事にしよう。 「知っています。お父様はご存知なんですね」 今度はお父様が目を見開く番だった。 きっと、疑惑が確信に変わったのだ。 僕はただの友達ではなくて、修介の恋人だと。 しかしお父様はその事には触れずに話し始めた。 「一度、見た事があるんだ。修介が高校生の頃、同じ制服を着た子と、手を繋いで歩いているところを」 僕はパチパチと瞬きを繰り返す。 高校の、同じ制服着た子と、手を、繋ぐ……? (重村くんか……) 写真で見た、いかにもお調子者そうなあの男か。 僕が外で手を繋ごうとすると絶対に嫌がるくせに、重村くんとは堂々と手を繋いでいるだなんて。 ……あぁ、違う。今はこんな風に嫉妬をしている場合では無い。 とにかく、お父様はそのシーンを見て、修介をこちら側なのだと判断したのだろう。 しかしその事を、修介は知っているのだろうか。 お父様は続ける。 「見た瞬間、正直信じられない思いだったよ。でも、悲観するとかそういった感情は無かった。修介は修介の人生を歩んでいってくれればそれでいい。そうは思うのだが……実際は……」 「修介の事、大切に思っているんですね」 お父様は喉を潤すように酒を流し込み、もう一度僕に向かって言った。 「君に家で挨拶をされた時からそうじゃないかと思っていたが、君はやっぱり、修介の恋人なんだね?」 「はい、そうです。黙っていてすみませんでした」 僕は静かに頭を下げる。 そして、黙っている事にした経緯を正直に話した。 お父様は時折頷いて、そうか、と呟いた。 「確かに、母さんは要注意だな。ネットにうっかり書き込んでしまうとか、やりかねない」 「はい。僕はちゃんと、修介を大事にしていきたいんです。嘘を吐くのは嫌なのですが、二人で一緒にいたいので。すみません、ワガママで」 お父様は少しにこりとして、また分厚いメガネを指で押し上げた。 「俺は、自分の事ばかりしか頭になくて。修介のやりたいようにやらせてあげたいのに、辛い思いや、悲しい思いはして欲しく無くて。何か気の利いた事を言おうとしても、いつも突っぱねる事しか出来なくて。いつまでも子供なのは、親の方だな」 「どこの親もそうだと思います。ちなみに、お父様の不安に思っている事はなんですか?」 僕の親は、何があってもあなたの責任よ、と言って僕を突き放した。 芸能界で辛い事があっても、逃げて帰ってきても家に居場所は無いからねと、笑いながら言われた事もあるけれどきっと本気なのだろう。 修介はよく、「景の家族は何でも話せてええなぁ」と言うけれど、修介の家もとても暖かい。 言葉は少なくても、こんなにも修介の幸せを願っている父親がいる。 「俺の、不安……」 「はい。僕と修介が一緒に住むのは、何が不安ですか?」

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