22 / 140
第22話
長い足で歩幅を合わせる彼。
位置が決まったのか、踏み切りの位置について、手を上げた。
そして、地毛であろう茶髪をなびかせ、綺麗な背面飛びを決めた。
ホント、何もかも完璧だ。
周りの生徒は、彼に羨望の眼差しを向けている。
そこに、ドンっと彼の背中に肩をぶつけた生徒。
振り返りその生徒の顔を見た瞬間、彼の顔が変わる。
あ、弟クンか。
見た目が違えば、身長差もある双子。
弟クンが少し見上げるように彼を見る。
さっきまでキリッとした顔つきだったのに、今は甘い笑顔で弟クンと話している彼。
「……ま、寺島!」
クラスメイトの声に"ハッ"として、実験台の方に慌てて目を向ける。
「何ボーッとしてんだよ。しっかり記録録れよ」
笑いながら言うクラスメイトに、"ゴメンゴメン"と俺も笑って誤魔化す。
慌てて記録を記入しながら、チラリとも一度外を見る。
そこには、やはり甘い笑顔の彼がいた。
ともだちにシェアしよう!