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第42話

「佐々木君って、双子なんだよね?」 「あ、うん」 「だから間違えないように、"雅実"って呼んでい?」 名前で呼ぶことに、別に理由なんていらないのに、もっともな理由をつけて彼にお願いしてみる。 人見知りの彼は戸惑っていたが、 「……いいよ」 と緊張気味の顔から、和らいだ笑顔で許可してくれた。 甘い笑顔ではないけど。 弟クンに見せる笑顔ではないけど。 ドクドク鳴る心臓。 手足の末端まで、血が巡る。 俺の恋心は、木になった林檎。 ただ違うのは、一瞬で真っ赤になって、簡単に落ちてしまったことだ。 いや、すでに俺の林檎は落ちていた。 初めて彼を見たときから。

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