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28.『自動補正』
バイト先の裏口を出てバイクのキーを取り出すと、暗闇にひらひらと白い欠片が落ちた。
とっておきのバイクの黒革の座席に舞い降りたサクラの花びら?…いいねぇ。絵になる。写真撮ろ。
先週末、バイト仲間の男に告白された。いつも気兼ねなく喋って笑い合う仲だ。なんで急に?ゲイでも無いし。からかってんの? 真に受けて悩んで勘違いだったらどうする?
真意を図りかね、その場は聞き流した。
それ以来なんだか気まずくて、今夜、バイト先恒例の花見はわざとシフト変更して逃げた。
スマホのカメラで舞い降りた小片に焦点を合わせ、画面を見てようやく気付く。
「なんだ、値札かよ。全っ然"映え"ねぇ…」
花びらかと思ったそれは、売価を貼るラベラーの小さな四角いシールだった。
自分の髪に手を遣ると、同じ小片がまだ貼りついていた。こんなイタズラをする奴は決まっている。
夕方、花見に参加するあいつと入れ替わりでレジに入った。すれ違った時になにかしやがったな。
幼稚園の頃、好きな子の髪にシール貼って叱られた。
そうだ。
ガキが悪戯するのは、好きな子にだけだ。
なあんだ、あいつホントに俺のこと好きなのか…。
なんだコレ。チョット嬉しい。
…花見、行けばよかった。
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