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女体化しました
オレはアルバート・フランシス。
どこにでもいる伯爵家の子息だ。ちょっと普通じゃないのは前世の記憶があるということだ。
前世では事故で急死し、現世に転生したらしい。思い出したのはごく最近で、そのきっかけはたまたま高熱で死の境をさまよったから。前世のオレはただの一般的な高校生だったので、前世の記憶があるからチートができるわけでもないが。
もしかしたら夢の中の話なのかもしれないが、それにしてはやけにはっきり覚えている。匂いとか手触りとかですらも。
もちろん気が触れたと言われて監禁されるに違いないので、誰にも言わないが。
今日も普段通りの朝。
のはずだった。
「んー……」
ベッドの中で伸びをする。
ふるん。
胸に昨日まで感じたことのない違和感を感じる。
……いやに重い。
「ん?」
胸に目をやると、胸元に二つの大きなふくらみがある。そこそこ大きいメロンほどはあるだろう。
着ているのは男物の夜着なので、窮屈そうに膨らんでいる。前のボタンを開けたらぼろん、と零れ落ちそうだ。
なんだこれ。
頭をかこうと手をやると、髪も伸びていることが分かる。色はオレのもともとの色と同じピンクだが、ゆるくウェーブのかかった髪は腰くらいまである。
男なのにいかにも二次元ぽい髪色が嫌で短髪にしてたはずだが。
ウィッグか?
どっちも妹のセシルの仕業だろう。
「おねーちゃんがほしい!」とかよく騒いでるから。
「ったく」
髪の毛をつかむと、ウィッグを外そうとぐいっと引っ張る。
「いて!」
接着剤的なもので張り付けてあるのだろうか?引っ張ったら外れるどころかめちゃくちゃ痛いんですけど?
夜着の胸元をのぞき込んでみる。
てっきりパッドのようなものをつめこんでいるのだろうと思っていたのだが。
完全に胸がくっついている。
前世も現世も女性に無縁な人生だったため、触ってみたい誘惑にかられるがとりあえず後だ。
ということは……。
「ない」
ズボンをのぞき込むと、予想通りあったはずのものがない。特に朝方は小さいながらも元気に主張していたはずの息子が家出。
慌てて鏡をのぞき込むと、そこにはオレの面影を残しつつも絶世の美少女がいた。オレもお世辞にも凛々しい顔ではなかったが、さすがに男は男だ。こんな美少女顔ではない。
目は二割増しデカく(当社比)、長い重力に逆らって、くるんとしたまつげがそれを縁どっている。肌は透き通るようなミルク色で、頬は紅を落としたようにほんのりと赤い。
骨格やプロポーションも完璧なボンキュッボンだ。胸は大きいのに腰はきゅっとくびれている。
身長は男にしては低い以前のままだったので、女性にしては高身長。
正直こんな女の子がいればぜひお付き合いしていただきたい。
「でもオレなんだよなぁ……」
どうしてこうなった。
鏡の前で頭を抱えてうずくまっていると、ドアが軽くノックされる。
「アルバート様、朝食の準備ができて皆様お待ちかねですよ」
「あ、ちょ」
待ってというより先に、メイドのアナベルが入ってくる。
「もう。また夜更かししていたんですね?お勉強ならともかくどうせ違うんでしょうし……」
ぶつぶつ小言を言いながら入ってきたアナベルは、ベッドにオレの姿がないので、不思議そうに部屋を見渡す。
オレは壁に張り付くようにしていたが、身を隠すものはないし部屋もそこまで広くないので当然すぐ見つかる。
オレの姿を認めてアナベルはすうっと息を吸い込む。
やべ。
不審者扱いされる!
「いや、あのアナベル。オレ……」
オレは慌てて口を開くが、自分でも状況が分からないので、なんとも言い訳が出てこない。
オレがもごもごしているうちにアナベルが声を上げた。
「あのアルバート様が部屋に女の子を!祝い膳の用意をして!」
……そっち?
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