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第45話(sideライゼン)
突然の風圧に驚いて一瞬石化してしまった私。
瞬きをして数秒、気がつくと風圧の張本人が、シャルさんの両肩に鬼気迫る勢いで手を置いていた。それだけで状況はお察し。
──こ、これは私達が宝物庫の整理を行っているという情報を得た魔王様が、収集癖露呈の危機に確認に来てしまったのでは…!?
まずい。私は魔王様に掴まれている良く言えば正直者、悪く言えば馬鹿真面目なシャルさんを恐る恐るチラ見する。
シャルさんは魔王様に弱いのでもし正直に言えと頼まれたら言ってしまう。言わなくても、正解レベルの発言をしてしまうだろう。
ゴクリと唾を飲み、魔王様を見つめる。
「ここで何か、み、見たか…?」
「ん…?ええとだな、ここでは歴代魔王のコレ、……」
「こ、コレ!?」
……いけません。
これはいけませんよ。
案の定バレているか確認してきた魔王様の勢いにありのままを話そうとして、私との約束を思い出したのか言葉を切ったシャルさん。
私はハラハラと冷や汗を流しながら事の次第を見守る。下手に口を出すとボロが出てしまう。
約束と魔王様の間で揺れるシャルさんは、オロオロと目線を外側へ散らしながら懸命に誤魔化す方法を考えている様子だ。
幸いにして魔王様はシャルさんの言うことは無条件に信じる。それだけは救いだ。
ならば、魔王様が言葉の含み を考えるのが苦手なタイプだと言う事も加味して、どうにかこの場は知らぬ存ぜぬで押し切れるはず…!
「こ、コレ……とかそれとか、色々だ。色々なんだ、だ、ダメなんだ!」
「なんで目ェ塞ぐんだっ!?」
あぁあぁあッ!シャルさん!そんな明らかに「何も見てません!」って態度で目を塞いだら、いくらイエスマンの魔王様でもバレちゃうでしょおぉぉぉぉッ!
シャルさんは嘘を吐くのに目を見つめられるのが耐えられないのか、自分の両目を塞いで、最早嘘でもなんでもない言い方で詳細を誤魔化した。
正直、少しも誤魔化せてない。
わかりやすすぎて何かあった事が魔王様に伝わりまくりだ。
「見たのか!?お前やっぱなんか見たのか!?」
「見てなっ、み、見てない、ないぞ!ないこともないが、ないぞ!」
「それゼッテェ見てるだろッ!?」
「約束したから、真実は秘密だ!」
「!お、俺に秘密な事を作んなッ!俺はお前の夫だろうがッ!」
「あっあぅ…!」
途中で見たか見てないかより秘密を作られた事がひっかかった魔王様にムギュッと抱きしめられ、罪悪感で呻き声をあげたシャルさんは、あえなく撃沈した。
私はあちゃぁ、と額に手を当てがっくりとする。我が王ながら、支配欲が酷い。
いや、よく考えたらこうなることは明白だ。
魔王様はシャルさんに愛想を尽かされるのを非常に心配してらっしゃるし、万が一にでも秘密裏に他の人へ懸想しようものなら、ツンデレからヤンデレへ一直線である。
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