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第471話(no side)

 ──和やかな光景から少し離れた木陰にて、身を潜める男五人の姿があった。 「ククク。愉快な仲間その二とその三が、甘っちょろいお仕置きしてらァ」  機嫌よく尾を振りながら笑うのは、ガド。 「ほんッと甘いよね。これ無傷じゃなきゃ許されない所業だから。鱗剥ぎ取って尻尾切って、タダ働きさせられても足りないから」  ツン、と澄ましてそう言うのは、ユリス。 「俺だってできることなら来世も逆らえないくらいの罰を与えてやりたいけど、拷問が苦手だからな……。チッ、火力が高すぎて難しい……」  火力の高さがジワジワいたぶるに不向きなことを嘆くのは、アゼル。 「そういう時こそ、俺を呼べや。聖剣は並みの魔族なら、触ってるだけでスゲェ焼けるぜ。目玉あたりをこう、ジュッとやってやるわ。勇者だから。マジで俺。子供に手を出すクソは、股間もげろ」  それに加勢する気満々なのは、リューオ。 「それじゃあ私が、適度に回復させますね。うん。まず気道を焼きます。すると悲鳴が上げられない上に、声を出すと凄く痛いのです……可哀想ですが、仕方ないですから……我が王に喧嘩を売るということは、私とやり合うということですし……」  善良なので民に危害を加えるのは不本意だが止める気は毛頭ないのが、ライゼン。 「じゃあ僕が調理場で使うミキサーの魔導具を改造して、持ってきますね! 魚の餌にしてやりましょうっ」 「じゃあ俺は足の爪をちぎって、そこから血を絞り出してやるか。もちろん肉は削る」 「じゃあ俺が傷を焼いてから、全指を複雑骨折させてやンぜ」 「そうですね。二度目はフルコースで行きましょうね」 「お前が止めなきゃだぁれも止めねぇよ? ライゼン」  殺る気満々の物騒な仲間達は、物騒な話をしながら、シャル達を見つめている。  ご丁寧になるべく気配を消して、こそこそと狭い木陰に男五人が身を縮ませて、無理矢理収まっているのだ。  バレてないのは奇跡である。  わざわざ休憩時間を示し合わせて来たのが、本気を醸し出していた。  言いだしっぺは魔王様。  魔王召喚スイッチ、強ち間違いではない。  この魔王様はシャルとタローがリンドブルム達に会いに行くと聞いて、過保護を発動。  大っぴらに反対したりついて行くと大人げないと考え、こうしてこっそりと監視しているのだ。  それに付いてきたのが魔界宰相。  事後報告を受けていつも怒り狂うチーム即断即決脳筋コンビの、勇者と魔導具研究所所員。  そして当事者のガドである。  ガドは負けておめおめ帰って来た情けない自分を気にせず、むしろなんやかんやと心配してくれた彼らに、ほくほく顔だ。非常に嬉しい。  ライゼンは親代わり。  ユリスとはシャル繋がりでよく話す。  シンユウシャなリューオとは、細かいことを気にしない同士気が合った。  魔王は言わずもがな。  口にしないが、ガドを大事にしてくれる。  彼らにピンチが訪れたら、ガドは必ず助けるのだ。  心配してもらえれば心配するし、見返りは求めない。そういうものだから。  なにかとズレた思考回路のメンツだが、みんな頗るイイヤツで、だからこそ頼るし頼られたい。  魔王城での毎日を面白おかしく自由に暮らすために、大切なこと。  それは譲れないライフスタイル。  そんな愉快な仲間達。  リンドブルム達には悪いが、やっぱりガドは空軍長官としてのこの生活を、どうしたって手放すことはできないのであった。  閑話 了

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