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第482話(sideアマダ)
魔界以外では弱体化する魔族。
天界以外では弱体化する天族。
それらとは違って精霊族はどこでも能力値が変わらない為、一年に一度の魔族との交流は、精霊王側が魔王城を訪ねる。
それは霊力が土地に依存しないからだが、それとは関係なく、アマダは魔界訪問が好きだった。
「ルノ、お前接待ゲームばかりじゃないか。俺があんまり頭良くないからって侮ってるな? このこの」
「そ、そんなことないです! ない、ないですよぅ~っ」
案内された豪奢な客室にて。
アマダは魔王の従魔が気をきかせて持ってきてくれたカードやボードゲームを、片っ端からルノと遊びつくしている。
しかしながら、ルノが王であるアマダを勝たせてばかりで、つまらない。
それを指摘すると、ルノは必死に顔と両手を横に振る。
アマダとて本気でそうとは思っていないけれど、からかうと小さなルノは可愛いのでわざとだ。
ふわふわと浮かびながら、テーブルに乗せられたフロランタンと言う人間国の菓子を摘んで、紅茶を操りカップなしで楽しむ。
サク、と軽い音がするお菓子はうまい。
普段は人間の食べ物を好んだりしてないが、これは甘さも丁度よく香り香ばしいので、もう何個も摘んでいる。
曰く、魔王城でだけ食べられる人気店のものだとか。んん、リピート必須だなぁ。
アマダ達精霊族にとって、夕飯前に食事をすることはマナー違反だとは思わない。
魔王との会食を残すことは考えない。
好きな時に食事をして、つど精霊族の神に感謝すればいい。
精霊族は他種族に合わせたりしないのだ。
「あはは! ルノが頑なに俺を勝たせるから、逆に足元見られて税金下げられたの怒ってるのかと思ったんだぞ?」
「ぅむむむ……せっかく神殿で占ってから十八パーセントまでがギリギリって決めて来たのに、いっぱいいっぱいもぎ取られてしまいましたねぇ~……。うう、でも仕方ない! 魔石は儀式に絶対ですもんっ! 怒ったりしないのです! ……だ、だってその、まおうさま、目がこ、こわいのでその、怒ったらきっとぼくはこっぱみじんに……」
「ならないならない。アゼリディアスは目つきと口と態度が悪いだけで、意外と優しいぜ」
容赦なくギリギリを攻めてきた腹の探り合いを思い出し、ルノが肩を抱いて震えるのを笑う。
彼はツンデレというやつで、アマダが王になったのは五年前だが、ずっとああだ。
特に悪気はない。
ただ、臆病なルノは魔王が苦手で、過剰反応する。
と言うか、日常的に魔法を放ったり殴りかかったりする荒っぽい魔族達が、全般苦手だ。
宰相のライゼンとはウマが合うようだが、ライゼンは魔王の敵以外の誰とでも仲良くできる温厚な魔族なので、あてにならない。
そもそもフェニックス──不死鳥は、精霊寄りの種類だ。
生まれが灰の中で自然発生。
親がいないのでどこでも馴染めるよう、温厚な性格になる。
魔族には詳しくないので、後は知らない。
アマダは誰とでも仲良くしたいタイプなので、ライゼンとは仲がいい。
仲が良くても、知らないことを知ろうとはあまり思わない。
知らなくても仲良くできるから。
そういう意味では、目下気になるのは魔王の妃だ。
仲良くなっていないので、知りたい。
無愛想な魔王を見たこともないような饒舌に変えてしまう女性が、酷く気になる。
その娘も、ちょっとは気になる。
「うーん、饒舌と言うより水を得た魚。つまり妃を得た魔王……おお、新しいことわざができた。よしよし、なら魔界に流行らそうかぁ~」
「ふへ?」
気まぐれな精霊族。
その王様であるアマダは気遣いもできるし人懐こいが、やっぱり流れる水のごとく自由であった。
うはははっ! と笑って見た目を水の塊そのものに変化させる。
そしてルノが首をかしげたのにも返事をせず、窓の外へプカプカと逃げていったのだ。
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