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第550話※

 我が物顔で絨毛を擦る怒張の反り返りや凹凸が前立腺を刺激し、全身をくねらせ身悶えた。  たまらない。腰のあたりを重い快感が満たしていく。 「あ、っあ、ひ、あぁぁ……ッ」  あまりに気持ちよすぎて、それが絶頂を迎えた時、目元にジワリと涙が湧いた。  一ヶ月溜め込んだ情欲を一人で発散させようと自ら慰めたところで、満足は得られない。  けれどアゼルの体に抱かれるだけで、俺の心身はとめどない満足を得る。  気持ちよすぎて泣くなんて恥ずかしくて、俺は顔を背けて、湿った枕のやわらかな布に頬を押しつけた。  そうするとアゼルが突然ギョッ! と目を剥き、逸らした俺の首筋を慰めるようにペロペロと舐めだす。 「しゃ、シャル、ん、怒ったのか? ほったらかしたからか?」 「ンぅ、えぁっ……? く、ちが、あっ……!」  チクリと針が触れるような刺激。  それが律動と共に何度も繰り返された。 「それともさっき噛んでた俺の手紙、読まずに食べたのか? ……ハッ! 割と前からわざわざ気配消して見てたから、い、嫌になったのかよっ?」 「お前それも見て、ッ、いや、違うか」  ガリッ、と鋭い刺激。 「ヒッ……ッい、んん……っ!」  勘違い暴走ワンコことアゼルは、俺の涙をネガティブな涙だと思ったらしい。  オロオロと勘違い論を繰り広げて、キスマークを付けることで誤魔化しを図る。  否定しようとした俺の声は、叱られるとでも思ったのか、首筋に強く噛みつかれたことで嬌声へと変貌した。 (この魔王様は、吸血の催淫毒でトバそうとしているな……ッ?)  謝ることも事情を聞き出すことも苦手なアゼルだ。  そのくせ一度思い込んだらひた走る。それも大抵後ろを向きながら、前方に全力疾走。 「あぁ、あッ、」  ドクドクと溢れ出す血液を早急に吸い出され、嚥下するゴクリという音が耳につく。  頭の中が冷えていくあの感覚。  冷えただけ、体が熱くなる。抑えきれない。 「ダメだ……ッあ、ぜる……! あ、いぅ、っ」  アゼルの首にしがみついていた手をギュッと反射的に握り込み、爪痕なんてつかない滑らかな肌に上等の生地の上から爪を立てた。  筋肉が痙攣し、襞の一枚一枚が体内を穿つモノにねっとりと絡みつく。  根元まで埋め込まれたそれが、甘えたな肉をかき混ぜるように細やかな動きを見せる。  ジュル……ッ、と最後に強く吸い上げた後、丁寧に傷口を舐めて治療しながら、その律動は激しさを増していった。  正しく『寂しがらせて泣かれたから、取り敢えず全力で気持ちいいことをしてやるしかねぇ!』作戦である。  本当に、本人は真剣そのものだ。  この、困ったさんめ……! 「あぁぁ……っひッ、だめだ、変に、なるから、あっアゼル……ッ!」 「なっていいから泣くなバカ野郎っ、いいか? お、俺が来なかったのにはちゃんと事情があってだな、この地獄の我慢大会を乗り切って信用させとかねぇと、後々問題が……!」 「んあ、ッあ、あ、ッ」  制止しようにも毒が回り始めて感度が上がったせいで、言葉を紡ぐことができなくなった。  アゼルが俺の目元に唇を移動させて滲んだ涙をキスで奪いながら、胸の突起をあやす。  指先で尖った粒をギュッと潰され指の腹で弄ばれると、どうしようもない。 「とはいえお前の様子がわからないのは我慢ならねぇから、お目付け役を付けたりしたんだぜッ。俺だってな、俺だって毎夜夢に出てきたからなッ。結婚指輪に話しかけるまで三日だぞ! 舐めんな俺の執着をッ」 「ちが、違うから、あぁ……ッ、気持ちいい、のっ、が、ンっ、んん……ッ」  怒っている、ように見えて言い訳と謝罪をしているアゼルが、乳首を愛撫しながら腰を引く。  そのまま前立腺を押しつぶすようにゴツッ、ゴツッ、と強く怒張を打ち込まれた。 (あぁ……っも、だめ、だ……っ!) 「イク、ンぁ…出る……っ、ひぃ、っふ……っ!」 「イってねぇでちゃんと聞け! 俺が悪かったッ!」  砕け散る理性と朧に霞む意識の中。  勘違いしたアゼルの謝罪という名の奉仕により、むこう二時間は余計に泣かされるはめになった俺であった。  ──……うん。  アゼルがアゼルのまま帰ってきてよかった。  俺のことを好きすぎるところも変わってないようで、安心した。  けれど強いて言うなら、手加減は覚えてきてくれてもよかった気がする。

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