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【disturb】水音1

【disturb】 ディスターブ 《平穏・平安・人の心などを》乱す。妨害する。 透は一人で湯船に浸かっていた。 「ふう………」 広い浴槽に脚を伸ばして、ほっと吐息を漏らす。 以前住んでいたワンルームよりも、彰広のマンションの風呂は広い。 軟禁生活から解放されて、三カ月が経った。 季節は十二月に入ったところだ。 今、透は彰広と一緒に暮らしている。 彰広と生きることを選んだからだ。 それでもまだ悩む夜もある。 全てでは無いが、彰広のしてきたことを聞いた。 彰広は黒田を殺してはいない。生きてはいる。でも、あれではもう……… 表向きは黒田は交通事故に、透は所謂「鬱病」によるドロップアウトになっていた。 彰広とは離れられない。 けれど、どうしようもなく気持ちが沈む時がある。 一人の時には特に………。 必要に応じて、彰広は恐ろしいことでもやってのける。八雲はもちろん、人当たりの良いあの真田ですらだ。 いまだにぐずぐずと悩む自分が嫌になるが、暴力や裏の世界の考え方に慣れたくはなかった。 ………パチャン。 気が滅入り、透は湯船に顔を浸けた。 「寝てんのか?」 突然、声をかけられ驚いた。水音を立てて顔を上げると、浴室のドアを開けて、彰広が覗いていた。 「あ、彰広。帰ってたのか」 「ただいま」 「おかえり」 「俺も風呂」 彰広は手早くスーツを脱いで、浴室に入ってきた。 浴槽に浸かる透の横でシャワーを浴びはじめる。 さっきまでぐずぐずと考え込んでいたので、彰広と居るのは少し気まずい。 透が先に風呂から出ようとすると彰広に止められた。 「もうちょっと浸かっていけよ」 彰広も浴槽に入ってきた。 後ろから透を抱くようにして、湯船に浸かる。 温かい湯に、心地良さげなため息を吐く。 「今日はどうだった?」 彰広が聞いてきた。 「平日だから、そんなに忙しくはなかったかな」 透は先月から、週三日ほどバイトに出ていた。 「働く必要なんかねぇのに」 「またその話? 俺は嫌なんだよ。なんにもしないでいるのは。男妾みたいで」 週三日の昼間だけという条件で、やっと出してもらえたのだ。 「男妾ねぇ」 彰広の手が意味深に透の肌を撫でた。 「っ!」 ビクリと透の体が揺れて、派手にお湯が跳ねた。 「彰広!」 彰広はベロリと透の首筋を舐め上げて、耳を咬んだ。 「やめろって!」 「男妾ってなんだよ? 教えてくれ。透」 耳を食んだまま、彰広がいやらしい声色で透の耳に囁いた。 そのままクチュリと舌を差し入れ、ねっとりと耳を責める。 「あ! や、やめっ………彰広ッ!」 湯の中で透の体がビクビクと身悶えた。

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