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第18話 -8
抱かれたいのに、抱いてくれない。
快感に喉の奥から甘い吐息を溢れさせ、幾らその吐息に声を混じらせ懇願しても襞を刺激しているだけのそれは決して中には入り込んで来なかった。
何回市倉の手で達させられたかは覚えていない。物足りなさに鼻を鳴らすも市倉ははいはいと受け流すだけだった。
それでも、幾らでもキスはしてくれる。煙草の苦味が残っている舌での愛撫に夢中になっていると、市倉は時計を見るなり起き上がった。
午後7時になろうとしている。何かあるのだろうか。
「?」
「これから佐月と予定があるので失礼しますね。中、ちゃんと痛くなくなってから続きしましょうね。いいですか?」
「……飲みに行くのか」
「飲みませんし、終わったらすぐに戻ってきます。じゃあ行くので、くれぐれも大人しくしておいてくださいね」
市倉は服を正しそのままの足で出て行ってしまう。
自分に関することなのだとは察することができるが、それにしたって行ってしまうのが突然過ぎる。
風呂上がりなのに汗でベタついた体が煩わしい。着せられた服をもたつきながら脱いでいると、市倉が出て行くのを待っていたのか澤谷が漸く脱衣所から出てきた。
「悟志さん、本当にすんませんした」
「別にいい。ただの事故だ」
身体にはまだ熱が残っている。暑いと言えば澤谷はすぐに空調を強い冷房に切り替えた。
あんなことがあって気まずいのだろう、澤谷は決して顔を合わせようとはしないまま少し離れたところに座り窓の外を眺めていた。
「……そんなに嫌か」
「いえ全然。あの、兄貴いつ頃出て行きましたか」
「ついさっきだな。……聞いてたわけじゃないのか」
「……聞いてました、けど、一応」
「俺が強請っただけだから、あいつには怒るなよ」
自分が強請ったから触った。だから無理に組み敷いて好き勝手にされたわけじゃない。
無理強いをされたと勘違いされては困ると悟志が言えば、澤谷はふるふると首を振った。
「俺が兄貴に怒るなんてそんな、烏滸がましくてできませんよ」
「なら何をそんなに気にしてるんだ」
違うのなら近付こうともしない理由が知りたい。
悟志の言葉に、澤谷は言い辛そうに言葉を濁した。
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