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異常
背中の痣はまだ無くなっていない。
あのトーナメント戦決勝後は首まであった痣が今は腰の辺りでうねっている。
この痣が、俺の”業”なのだろうか。
フォレストがどうしてああなってしまったのか、結果として自身の「呪い」に食い殺され死んだが、もし俺が『彼』を知っていたら俺はフォレストを止めることができただろうか。
痣のせいで気を失った後、トーカが俺の部屋にいたのはクロエが連絡をとってくれたからだと思っていたがそれは違った。
当然クロエは団長に知らせなくては、と連絡したらしいが『もう向かっている』とその一言で連絡を切られたらしい。
トーカは何かを知っていて、なにかしら行動してるのかもしれない。
だが、トーカが今までそれを俺に教えたことはないし、一人で動いて一人で片を付けてくる。アイツはどうせ地獄に落ちても這いあがってくるような男だから心配などしていないが、今回は絶対巻き込まれている。
俺を巻き込むなら事前に言ってくれたっていいのに、あの暴君め…。
実戦授業が始まって約20分。早くも脱落者が大勢でている。
これは後半にいくに連れて戦況は厳しくなってくるだろう。
影が薄いのが功を奏し、基本的に俺はおこぼれをもらっている。木の上で常に戦況を把握し、とれそうなハチマキをとっていく。
獲得したハチマキは全部で27本。まずまずだろう。
もう少し時間が経過したら地面に降りて狩っていくことにするか…。
それにしても奇妙だ。嫌に山が静まり返っている。
「た、たすけてくれ…!」
下を見ると、一人の生徒が満身創痍で『なにか』から逃げている。
気の枝から飛び降りて、その『なにか』を鞘で気絶させ、追われていた生徒の方を見る。
「あ、ありがとう…」
気絶させた『なにか』はおおよそ人の形をしているが、ところどころ骨がでていたり、毛も少ない。俺はあのカルト宗教団体『xxx』の報告書にあった『人形』、そしてメレフに襲われた時のゾンビを思い出した。
あまり触りたくはないが脈を図る。やはり死んでいるようだった。
こいつが正真正銘本物のゾンビだったら心臓や脳を突き刺したところでまた動きだすのだろうが、なにもしないよりマシだと心臓の辺りを刀で貫いた。
そこにあった『なにか』が溶けだし、そこには何も残っていない。
俺は腰が抜け立ち上がれない生徒を立たせる。俺よりも身長がずっと高いが、頼りなさそうだ。
「じゃあ、ハチマキもらうね」
彼の腕に撒かれていたハチマキをもらう。なんとでも言え。俺だって、副会長に殺されたくないのだ。呆然として動かない男を置いて、この場から離れることにする。
「あ、あの…!」
後ろを振り返ると、顔を真っ赤にした男がなにか言いたそうにこちらを見ている。
…文句か?
「君、一年生のシキくんだよね?」
「そうだけど…」
「僕、二年Aクラスのリエトって言います!」
年上かよ…思いっきりタメ口で喋ってしまった。すみません、とだけ返すと男は思い切り首を横に振った。
「僕君のファンで…!」
「どうも…?」
「応援しています!頑張ってください!」
言い終わると脱兎のごとく走り去っていく男の背中はいつの間にか見えなくなった。なんだったんだ…俺のファン…?こそばゆいような、あまり嬉しくないような複雑な気持ちなる。
それよりも、と今しがた『ゾンビ』もしくは『人形』が溶けていった場所を見つめる。
こんな時に外部と連絡を取る手段がないなんて。いつも連絡をとっているカフスは学園裏の山では通信が行えない。
全校生徒がどこにいるか把握しきれない状況で、この異常事態だ。
一刻も早く実戦授業を取りやめるべきかもしれない。俺は様子を見るべく走り出した。
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