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第53話
春side
痛みがわからなくなったのは、物心ついた頃から…。二番目のお兄ちゃんは、家族から居ないもののように扱われてて、その延長か、僕も居ないものになってた…。
一番上の兄さんだけが、彼らの子供で、お兄ちゃんと僕はただそこに存在するものだった……。兄さんはそんな僕たちの面倒を見てくれた。
兄さんが成人して家を出る時、彼らは兄さんに家を買って与えた……。αの彼らは、αで優秀な兄さん以外は、要らないものだったんだろう……。
だから兄さんが、お兄ちゃんと僕を連れて行くと言っても何の文句も言わず送り出してくれた。お兄ちゃんは、悲しそうに笑ってて……。僕も兄さんたちさえいれば後はどうでもよかった……。
でも、兄さんとの生活は長くは続かなかった。彼らが選んできたαのお嬢様と兄さんが結婚したのだ…。αの中で育ってきたその女はお兄ちゃんと僕を毛嫌いして、嫌がらせをしてきた……。
兄さんは、お兄ちゃんと僕を守るためにお兄ちゃんと僕だけの二人のための家を建ててくれた。今でも時々あの女に見つからないようにこっそり様子を見にきてくれる。
「お兄ちゃ……ーーー
『あっ……あぁぁあぁ!…あっ…』
『うるさい、黙って』
『あっ……ごめんなさ……。っ……っ……んっ……!!…っ……!』
ーーーごめっ……」
ようやく、お兄ちゃんとの生活慣れてきた矢先…。お兄ちゃんに番が出来た……。佑々木 聖…。遊び人でお兄ちゃんは、いっぱい泣くようになった……。
たまたま開けちゃったドア……。中からは、お兄ちゃんの喘ぐ声とそれを怒る佑々木の声…。謝って、声を押し殺す苦しそうな呼吸音を奏でるお兄ちゃん……。
助けたくて、助けられなくて……。唯一お兄ちゃんのを助けられるのはあの憎い佑々木だけで……。頭の中ぐちゃぐちゃで、兄さんに助けを求めて、兄さんの家に行くと、そこにはもう兄さんの家はなかった……。
兄さんは、お兄ちゃんと僕に家を建ててから、引っ越してた……。あの女とも離婚しててあの家は女のものになってた…。
兄さんが僕たちを守った代償だったんだ……。
彼らから勘当され、色んなところに手を回されたらしく、仕事ができなくなって……。海外でクリエイターとして絵を描いていると、あの女は僕に語って聞かせた…。"お兄ちゃんと僕が生まれなければそんな事にはならなかった" "つくづく邪魔な奴だ" って嘲笑ってた……。
泣いて夜の街を歩いてた時に出会った翡翠さんは、そんな僕を慰めてくれた。痛みを共に感じて、背負ってくれる人……。
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