20 / 180
第20話
「城に泊まんのっ?」
「城だな」
「ホテルですらねぇじゃん!」
城なんか泊まったことない。洋館ってこと?洋館でもないのか?
頭の中を整理しきれないまま軽く首をかしげると、彼は胸ポケットからスマホを取り出した。
「この城だ。俺たちのホテル兼彼らの結婚式場」
太い親指で操作した画面には、絵に描いたような外国のお城、それこそお姫様とか王子様とか住んでそうなお城がデカデカと、そして綺麗に映し出されていた。
「うへぇ……何これ、普通に城じゃん」
「立派な城だろう。600年ほど前に造られたそうだ。今は中を改装して、リゾートホテルとしても利用されている」
「あ、じゃあ泊まれるようになってるんだ」
「ああ、結構立派なホテルらしいぜ、俺も行ったことはないんだが」
そのまま画面を操作すると、オススメの観光情報のページに飛んだ。訪れるべき場所と一度は泊まりたいホテルに、今見たばかりの城の写真が表示された。
「ここを貸し切りにして式を挙げるんだそうだ。それから、招待者をここに泊めると言っていた」
「そりゃあ豪勢なこった」
「全くだな、彼ららしい」
シェフはともかく、相手の首相のことはニュースでしか知らないから、彼ららしいというのどういうことなのか、俺にはよくわからなかった。
ともだちにシェアしよう!