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君という光2

……冴香か?忘れ物でもしたのかな…… そう思いながら玄関に向かい、ふと既視感を覚えて、薫は足を止めた。 ……なんだ……?前にもこんなことが……あった気がする。 遠い昔の過去が、掴みきれないほど微かな映像を結ぶ。 数秒考えて、薫は苦笑した。 そう……。たしかにこんなことがあった。 でもあれはもう……過ぎたことだ。 同じであるはずがない。 玄関で靴を引っ掛け、ドアの鍵を外す。 ガチャリと開けてから、しまった、と思った。 いつも冴香に注意されるのだ。セールスや勧誘や不審者の可能性もあるから、不用意にすぐドアを開けずにインターフォンで相手を確認しろと。 でももう遅い。開けてしまったのだから、このまま対応するしかないだろう。 ドアを開いて様子を窺う。 隙間から見える範囲には誰もいない。 薫はドアの外に出てみた。この階の共有スペースを見回してみるが、やはり人影はなかった。 ふと、足元の真っ赤な色が目の端に入って、薫は床を見下ろした。 薔薇だ。真紅の薔薇。形の整った紅い薔薇だけが100本近く束ねられた、ボリュームのある花束が、ドアのすぐ横の床に置いてあった。 薫はもう一度辺りを見回し、屈み込んで花束をしげしげと見つめた。 淡い色合いの薄葉紙を重ねたラッピング材に包まれたそれは、かなり高級そうで、美しく形の揃った薔薇の間に、メッセージカードが挟まれている。 薫は指先でそれをつまみ上げた。 カードには「Congratulation」と印刷された文字があるだけだ。差出人の名前はない。 おめでとうと言うのは結婚記念日のことだろうか。だとしたら、冴香のサプライズか。 彼女ならばこんな手の込んだことはせずに直接渡してくれそうな気もしたが、他に心当たりがない。 薫は花束を持ち上げて、しげしげと見つめてから、もう一度辺りを見回した。首を傾げ花束を手にドアを開けて玄関に入る。 何となく腑に落ちないが、後で冴香に聞いてみよう。

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