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君という光7
牧の眼差しにバツの悪さを感じて、薫はついムキになりかける自分を必死に自制した。
「あ……いや。元気でいるのかなって……気になって」
「おい。そんな顔をするな。俺は何も言ってないぞ」
牧は苦笑混じりにそう言って珈琲をひと口啜り
「見た目がな、まず驚くほど変わっていたんだ。まあ、俺が知っていた樹くんは、あの頃まだ中学生か?今は20歳過ぎだから、変わっててもおかしくはないけどな」
「今、22です」
「そうか。身長が伸びていたよ。並んで立った時、俺より目線がだいぶ上だった。おまえよりは低いけどな」
薫はまた目を見張った。
……そんなに……伸びたのか……。
あの頃、樹は同級生たちと比べて背が低いと、よく愚痴を言っていた。
……そうか。7年でそんなに成長したのか。
当然と言えば当然だ。一番育ち盛りの年頃だったのだから。
背が高くて男らしい兄さんが羨ましい…と、いつも拗ねたように言っていた樹の表情や声を思い出し、薫は思わず頬をゆるめた。
だが、すぐに胸がつきつきと痛み出す。
その成長を、傍で見守ってやることが出来なかった自分の不甲斐なさに。
「あの頃は、目ばかりやたらと大きくて女の子みたいな感じだったがな。顔つきも青年っぽくなっていたよ。いや、相変わらず人形みたいに綺麗な顔だがな」
そう。綺麗な子だった。女装しても違和感なく本当の少女に見えた。
ずっと記憶の奥底に仕舞いこんでいた、樹のぎこちなくて可愛い笑顔が、鮮明に浮かんでくる。
薫は慌てて瞬きして、珈琲をひと口啜った。
「それで、印象が変わってしまってた…っていうのは」
カップの中の黒い液体を見つめながら、薫が呟くと
「うーん……なんて言えばいいんだろうな。表情とか口調や仕草なんかが、ちと予想外って言うか……」
牧の言い方が急に歯切れが悪くなる。薫が顔をあげると、困惑したような牧と目が合った。
「予想外……?」
牧は弱ったように目を逸らす。
「覚えてますか?樹です。そう名乗られて、最初は驚いたけどな。あのおチビちゃんに年月重ねてみりゃ納得の変化だったんだよ。だが、カウンターに座った彼と話し始めて、どんどん違和感が強くなった。これは本当にあの樹くんか?…ってな」
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