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光射す午後に23

和臣の言う通りなのだ。 だからこちらとしても、打つ手をいろいろ考えている。その為には何よりもまず、和臣本人の協力が不可欠なのだが……。 「君は今後、どうしたいの?山形に戻らないとしたら、これからどうするつもりだい?」 和臣は首を捻って 「どうするかはまだ決めてないよ。たださ、あんたらのおかげであいつらんとこから抜け出せたし。ようやくまともに考えられるようになったんだよね。これからのことも」 月城は頷くと 「だったらまず、もう勝手に自分だけで動かないと約束してくれるかい?和臣くん。君の今後については、樹さんと俺の方で出来るだけのサポートをする。ご実家に帰るのが難しければ、東北から出て生きていく為の手助けもするよ」 和臣は樹とこちらを交互に見て首を傾げ 「どうして俺に、そこまでしてくれるわけ?あいつらんとこから俺を連れ出すのだって、あんたら相当危ない橋渡ってるよね?」 「それは……」 月城が言い淀むと、今度は樹が身を乗り出した。 「君はにいさんの……藤堂薫さんの義理の弟だ。理由はそれだけだよ。君が巻き込まれてしまったのを知って、放ってはおけない」 キッパリと言い切る樹に、和臣は複雑な表情を浮かべた。 「あんたって……よく分かんねえな。俺はあんたのライバルの弟じゃん。俺なんか助けたってあんたには何の得もないのにさ」 「約束してくれる?勝手に動かないって」 和臣は、はぁ……っとため息をつくと 「分かったよ。で、俺はどうすればいいわけ?」 「君がこの件に巻き込まれた経緯を、もっと詳しく知りたい。誰や、どんな組織が関わっているのかを」 「分かった。じゃあその前にさ、ひとつ、俺の質問に答えてよ」 「なに?」 「あんたは今でも、藤堂薫のことが好きなんだね?」 途端に樹は顔を曇らせ、口を噤んだ。 「正直に答えてよ。あんたの本音」 「……それを聞いて……どうするの?」 「別にどうもしない。ただ、知っておきたいだけ」 樹は俯いて、しばらく躊躇していたが、やがて顔をあげると 「好きだよ。弟としてね。にいさんを尊敬しているし大好きだ。だから幸せになって欲しいと思ってる」 「弟として…ね。じゃあさ、あいつが姉さんと別れてあんたと暮らしたいって言ったら……どうする?」 探るような和臣の眼差しに、樹は穏やかに微笑んで首を横に振り 「大丈夫。そんなもしもはありえないから。にいさんは彼女と別れたりなんか、しないよ」 和臣はちぇっと唇を尖らせた。 「なんで断言出来るんだよ。俺は絶対にあいつを義兄さんとは認めないけどな」

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