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光射す午後に25
「仙台に戻って来たのは最近?あのマンション、樹さんが買ったんだよね?」
月城ははっと息を呑んだ。
「ね、和臣くん。君、あのマンションのこと、どこで…」
その時、病室のドアがバタンっと派手な音をたてて開いた。
驚いて振り返ると、ドアの前には樹がいる。酷く青ざめ、顔を強ばらせていた。
「月城さんっ、まずい」
「どうしたの!?」
月城は慌てて立ち上がり、樹に駆け寄った。樹はふらついて今にも倒れそうだ。その肩を強く掴んで
「樹くん。何があったの?話して」
「……っ、にいさん……にいさんが、」
「っ、薫さんか。今の電話は黒田くんから?」
樹は息を詰まらせ、月城に縋り付いてくる。
「なに?どうしたの?」
驚いて駆け寄ってきた和臣から、樹を庇うように抱き締めて
「いや、何でもないよ、和臣くん。ちょっと急用が入ったから、いったん失礼するね」
薫の身辺をそれとなく見張らせていた黒田からの電話。だとしたら緊急事態だ。
まさか向こうには手を出すまいと思っていたのだが……。
「急用って?あ、おいっ」
樹を抱き締めたままそそくさと廊下に出ようとすると、和臣に腕を掴まれた。
「なんだよ、何があった?にいさんって、藤堂薫のことだろ?」
「和臣くん、手を離して。後で電話で説明する。悪いけど急ぐんだ」
月城の鋭い語気に和臣は気圧されたように手を離した。
「ごめんね。後で必ず連絡するから」
まだ納得いかなげな和臣に、月城は少し口調を和らげて謝ると、樹を連れてエレベーターに向かった。
ドアが閉まり箱が動き出すと、ずるずるその場にしゃがみ込みそうな樹の身体を、しっかりと抱き直す。
「黒田くんは何て?」
「白昼堂々、連れて行かれたって……どうしよう……僕の、せいだ」
「樹くん、しっかりしなさい。黒田くんは相手の顔を見たの?」
「サングラスしてた。車のナンバープレートも隠してあった。直ぐにバイクで後を追ったけど、途中で撒かれてしまったって」
箱が1階に到着する。
「とにかく車に。樹くん、歩ける?」
樹はこちらの腕にしがみついたまま、頷いて
「だい、じょうぶ。僕が、しっかりしないと」
「そうだね。薫さんを助け出せるのは我々だけだ」
ふらつく樹を支えながら駐車場に向かう。
今の状況で、薫を拉致する可能性があるのは連中だけだ。
その目的はおそらく樹と和臣。
先日、和臣を連れ出したことに対する、これは報復措置だろう。薫の身と引き換えに、向こうは樹と和臣の身を要求してくるはずだ。
「まさか……にいさんの方に手を出すなんて……」
そう。まさかだった。万が一の為に監視は付けていたが、想定外だったのだ。
連中の中に、かなりの事情通がいることになる。
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